TOA1

□嬉しさ半分、強制連行
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 ……まぁ、なんだ。

 アクゼリュスの避難云々とか、瘴気でボロボロだったパッセージリングの除去までは上手くいってたんだ。

 けど、ナゼか俺を連れて行こうとするヴァン師匠専属のフレスブルグ――あれだけ俺を使い捨ての道具扱いしてた師匠が俺を連れ帰ろうとするなんて、一体どんな心境の変化があったのだか――にジェイドが譜術をぶちこんだ辺りからなんとなく雲行きが怪しいなーとは思い始めてた。そのあとアクゼリュスの崩落に巻き込まれちまったけど、ティアの譜歌の相伴にあずかってなんとかやりすごし、さぁシンクたちと合流だ! なーんて息巻いた矢先タルタロスに引きずりこまれた。

 連れてこられたブリッジでは、まずルークの事実追求に耐え――耐えたと言っても、ルークは何故か戸惑っていて思ったより厳しくなかった――、ナタリアやアニスの蔑むような視線に耐え、ジェイドから向けられる胡散臭い笑顔――なんでここで笑顔なんだ? なんて思ってはいけない。あいつの思考回路を読み取るなんて俺にしてみれば神業に等しいのだから――とその裏で働く観察眼に恐怖し、イオンの「力になれなくてすみません」という視線に「気にすんな」とこれまた視線だけで答えた。この辺りではまだ雲行きの怪しさが微妙に嫌な予感へと変わり始めていたけれど、ただそれだけ。

 で、決定的にヤバいと身の危険を感じたのが、ガイとティアににじりよられている正に今この瞬間だってんだから笑えやしねぇ……! しかも現在進行形で事態は進行中。

 このことがシンクあたりに知られた日には末永くからかわれ続けるに違いない。……ヌケサクとか天然とか。仕舞いには「そこまで危機感覚が抜けてて、よく今まで生き残れたよね」なーんてネチネチと言い続けるに決まってる。深ーいため息と見下すような視線のセットで。でもそのセリフは敵対してたクセにアクゼリュス崩落から俺を助けた上に拘束すらせずタルタロスのブリッジまで引き込むなんてマネしたこいつらにも言えっての! ……まぁ、そう言ったら言ったで「自分の失敗を棚に上げて、他人の落ち度をあげつらうなんて人としてどうなのかなぁ?」とか返されるのが容易に想像できた。

 確かに過去にやらかしてしまった俺にはちょっと耳の痛い言葉だったけど――



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