TOA1

□ジェイドと陛下の毒々トーク
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「よお、ジェイド。今日も一人寂しく書類整理か?」

 マルクト皇帝は今日も今日とて幼なじみにして懐刀たる死霊使いへ、軽く声をかけていた。

「えぇ。誰かさんが家畜にうつつを抜かす度に、私の所へまわってくる仕事が増えるものですから」
「何言ってんだブウサギは男のロマンだろ。お前はあの可愛いネフリーや可愛いジェイドを見て何も感じないと?」

 真顔で答える上司に、上司曰く《可愛くないほうのジェイド》は大きなため息をついた。

「……全く。初恋の相手や知人の名前を付けた家畜とふれ合うのが三度の飯より大好きな少女趣味のオッサンが上司かと思い出すたびに、情けなくて首を吊りたくなりますよ」

「……ジェイド。お前は俺の事を何だと思っ――」

 可愛くない部下とはいえ、ここまで言われればさすがのピオニーでも追求しないわけにはいくまい。だが、皇帝陛下の言葉は否応も無く遮られた。


「――ブウサギの首をこう、キュゥっと吊りたい気分です」


――無慈悲な台詞に。


「ジェっ、ジーェイドぉーーッッ!!」

 まぁ、首と胴体の境目の無いあの家畜の首を絞めるというのは相当に骨が折れそうですが。

 そんな冷淡な呟きすらもれでたが、目に滝のような涙をたたえた皇帝はそんな独り言を聞けるような精神状態ではない。自分の歳も立場も考えず死霊使いにしがみ付いて「本気じゃないよな? なぁ、冗談だよな?」と問いかけ続ける。

 その想いも空しく。

「さーて、今夜の夕食はブウサギの丸焼きですかねぇ」
「お前ブウサギの肉食えないくせに何言ってんの!?」
「はっはっは。別に私が食べるだなんて一言も言ってないじゃないですかぁv と言うわけで終わりの安らぎを――
「ちょっ、待てっ、禁止っ、室内でフレイムバースト禁止――ッッ!!」
「おや、陛下。ミディアムはお嫌いですか? それなら……業火よ、焔の檻にて――
「ひぃぃっ、俺が悪かった! 俺が悪かったから!! やーめーてーくーれーっ!!」


 その後、数日間マルクト皇帝が引篭もったという情報がマルクト全土を駆け巡ったり巡らなかったり。




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