ナニカ

□黄龍異世界漂流記1
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 ………。

 目を開けたらきれいな青空が広がってました。

 スモッグの無い透けるような青から水色へのグラデーション。こんな青空、環境汚染だ温暖化だなんだと騒がれる昨今では滅多に拝めない代物だよなぁと頭の片隅で思いながら僕は上半身を起こした。そうして目に飛び込んできたのは広大に広がる草原と、高くそびえたつ山々。

 ……なんか微妙に世界観が変わってない?

 感じる違和感に自分まで取り込まれているような気がしてきたので、とりあえず自分に関する事を確認してみよう。僕の名前は緋勇龍麻。んで大学卒業してからこの数年、友人ばかりか家族の目すら晦ませ日本放浪しまくり。数ヶ月前、とある事情から成り行き《宝探し屋》になった。……でも表立って認められてる職業じゃないから傍から見ればニーツだねニーツ。なんか悔しいから断じて正式名称では言ってやんない。うん、よし。とりあえず自分の事はちゃんと認識できてるみたいだ。


 それにしても……うっわー大自然のど真ん中だよ。意識が途切れる直前にいたのは地中深くに根付く洞穴だったっていうのに。

 しかもその時は一人っきりだったし他の人間が入り込めるような場所でもなかったので、誰かに連れ出された可能性はゼロの筈だ。そのはずだが――

「あ、目が覚めたんですね!」

 良かった。と、傍らに座ってこちらに顔を向けた緑髪の少年が喜びに満ちた声をあげた。

 ……多分、《此処》で意識を失っていた僕を介抱してくれた親切な人なのだろう。まぁそれは良い――いや、良くないけどこの際それは置いておく。解せない事があるのだ。それも早急に考える必要がありそうな問題が。




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