華信(仮)

□第十四話
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 身に凍みる風はどこからも、どこへでも、吹き続ける。
 枯れ葉と小石が音を連ねて過ぎていく。


「このままじゃ発てそうにないなあ、春先まで」

 暴風が荒ぶ外を音で確かめながら、ギンジは高らかに笑った。


「……嬉しそうに聞こえる」
「そら嬉しいもん」

 一つ膳を置いた先には、ゼンが背筋をのばし正座していた。

 お礼にしにきたはいいが、どうにも居心地が悪い。
 かといってこのまま引き下がるのは無礼というもの。

 どう退こうか上目で考えたままのゼンに、ギンジは静かに笑んでやる。

 たまに口を開けば他愛もないことを話し、そうしてまた沈黙が流れる。
 そのやり取りが、随分と長いこと続いたままでいた。


「……お前には、好きな女子がおるいうてたが」

 いきなりの話題に、ゼンはぱっと視線をあわせギンジを見つめた。
 いつもとは少しばかり違う、覇気を含んだ瞳が、こちらを射ている。

「……うん」


 胸が急激に太鼓を打ち出した。
 火点きの時に鳴る鐘の音が、五体を流れるようにして聞こえてくるように思う。


「で、それがこの前死んだレンリ、言う女か?」


 この場合、はっきり言ってしまったほうがいいのか。

 ゼンはしばらく口ごもったすえに、首を横に振ってしまった。

 レンリだった、といえばいくらか春までギンジには隠し通せたかもしれない。
 が、レンリを利用するにはあまりに酷な気がしていた。ましてや死人。だからこそ安らかでいてほしい。

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