番外編とか
□藍より青い
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青い空に浮かぶ白雲。
うっすらと瞼に焼きつく景色を楽しむように、私は今日も空へ泳ぐ。
【いいかっ!?
もうおれは一人前なんだ、お前と一緒に行動するなんて、まっぴら御免なんだよっ!
一人で歩くことくらいできるっっ!】
と言った矢先に、彼……私の主人はその場で横転した。転んだのだ。
かける言葉を一瞬失った私と、廊下で談笑していたすべての生徒が主人へと視線を集めた。
耳を真っ赤にし、口元を押さえる。
運良く? ……運悪く突如廊下へ出てきた佐伯真志さんが、主人のとばっちりを受けた。
俗に言う八つ当たり、というやつだ。
離れろと言われても、私は命に背くことは出来ないので、当然後を追った。
【っ……だからっ! ……いいっ! お前は執事失格! おれの執事はこれから……真志だっ】
ビシッと佐伯真志さんを指さして言うと、私に背を向け歩き出す。
私は即座に胸元にあるピンズに向かって、呟いた。
【……どうしましょう?】
【一日くらいはどうってことないんじゃないかあ?】
金髪で舌っ足らずの上司がそう返してきたものだから、私は天井を仰ぎ見てから鐘の音を無視し階段を上った。
──というわけで、急遽、暇をもらうことになってしまいました。
サボり、というのは小羽家に仕えるようになってから今日で三回目だ。
意外とサボっているな、と思われることだろう。
私は六歳の頃、施設を出て小羽家の教育を受けた。
八歳の頃、あまりに堪えかねて家出、をしたものの、小羽家自体が広すぎてすぐに捕まった。
次にサボり、をしたのは、小羽家三女の弥樹(みつき)様の命により仕方なく従った。
正直、姉弟がここまで似通った思考を持つとは驚きだった。
──……それにしても。
「……藍より」
──青い。