番外編とか

□見てくれ
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奏でるならば、そう、葉の音が良い。
やわらかな風に抱かれて瞳を閉じたあの頃が
とても懐かしくて――涙を誘う程に、切なくて。


葉桜ばかりの心に、櫻の色が塗られたのは、お前のあの鮮やかな瞳だった――。


――――心は重くて、背負い切れそうにない。
15を迎えたら、果たして俺はどうなってしまうのだろう?
認められなければ死ぬか?
死ななきゃ、名誉に傷が付く――。

いつしか自分の気持ちは置き去りに。
考えあぐねて、やがて春の過ぎた縁側で仰向けに寝転がる。

今、こうしていられることさえも、幸せだったと思う日が来るのかな。

千里の瞳は教えてくれない。

俺がこの先どうなるのか、未来が開けない。

――人の心は簡単に見えてしまうと言うのに。


「何を思ってる……誰を想ってる」

いい加減、俺だけを――見てほしい。

組み敷き喘ぎを漏らしても、ちらちらと心の隙間から、淡い想いが感じ取れる。
すぐに誰に向けての想いだと分かったのは、俺の腕の中で呟き漏れる名前だった。

俺の顔を見て、俺の名を呼ぶのに、どうして心の底では俺が居ない。

――考えるのも疲れた。

本当は、考えるのも、見るのも、会うのも怖い。
でも、会いたい。


神――に認められれば確固たる地位が与えられる
そう、言われていたのに。

情報がいくつも溢れでて、一人じゃ抱え切れそうになくて。

日を追うごとに強くなる瞳は、やがて俺の心を蝕んでいく。

暖かいものが失くなって、冷たく冷たく、あいつにさえも当たってしまうほどに。

「たすけて、くれ……」

弱音じみたこの言の葉は、誰にも紡げない。


――誰か、無理にでも心を

「俺を、見てくれ……」




 

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