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□いつからだっけ
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──あ、れ?
空はいつからこんな風に見えるようになったっけ。
ああ、今朝からそういえば曇っていたっけ。
予報でも雨って言ってたっけ。
天気予報と運勢占い、今日は良い日だって、そう、君に会えるからきっと今日も楽しい日だって──。
──いつからだっけ? いつからこんな風に見えるようになったっけ?
「ごめん、ごめんね。今度また、埋め合わせするから……」
いらいら、いらいらして。
つい素っ気なく怒鳴ってしまった。
やがて降りだした雨。俺の心もとっくに雨だ。嵐だ。雷が鳴ってる。いらいら、する。
今朝、いつものように椿のある公園を抜け、学校に向かっていた。
そろそろ、そう、蕾が開いたら、また一緒にここにきて、また笑い合おうって。
当たり前のことのように去年のことを思いだして、記憶の中で、君の笑顔……抱きしめた。
なのに教室へついたら、君の笑顔が違って見えた。
傍に居たのはアイツ──。お前が苦しめられた、アイツ。
何度だまされたの、何度ないたの、何で……何で俺にはしない笑顔すんの。
俺との予定蹴ってまで会うのは何で?
俺のこと、どう思って────……
──都合の良い、相手……か。
気づいたら頭から離れなくなって、ますます不安が募って、どうして俺、こんなんなんだって。
いつからだっけ? いつから俺、お前のことこんなに考えるようになったっけ?
一向に止まない雨の中、ロッカーに置いておいた折り畳み傘をひらいた。
下校時刻ぎりぎりまで待ってみたけど、止みそうになかった。俺の心も、この天気も、晴れることない。
一歩進みだすその先に、不意に。
────不意に、息の止まるほど綺麗な君が居て、その横には、アイツ──。
止まった息を、ずっと止めたまま、時も止まって、むしろ逆に進んでさ?
アイツと出会う前の君に、俺が先に出会えてたら……。
出会えてたら──……。
いつからだっけ? いつからこんな風に考えてたっけ?
──君に出会ったその時から、アイツの為に流す涙見てから。
俺が先に出会えてたら、君はその笑顔を俺にくれていたのかな。
いつからだっけ……、その笑顔、見せなくなったの。
いつからだっけ……