中篇
□神様編
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シアの願いを叶えるべく、移動した世界の彼は、その世界の住人ではなかった。
シアはウキョウという男の、幸せになる姿を見届けるために過ちを繰り返した。
でもそこに居るウキョウは、神様、ニールが傍に居た。
彼もまた、同じ理由で世界を移動していることがわかった。
私は、シアの願いを叶えるのが最大の目的。
つまり、この世界にはもともと、シアも、ウキョウも存在しないのだ。
ウキョウの気配を辿ってたどり着いたこの場所も、偶然に偶然が重なってのこと。
ウキョウの移動の瞬間と、シアの移動の瞬間。
私もニールも、その気配を誤認した結果、2人は出会った。
絶対に出会うはずのなかった、違う世界の2人。
2人は木に寄りかかりながら、あの日の悲劇を語り合う。
これで、シアの願いは叶う。
きっと、ウキョウの大半の願いもここで叶ってしまうのだろう。
でもこれは、きちんとした2人の願いではない。
だから、この2人は異空とも言える闇に閉じ込められてしまうだろう。
そうすれば、その魂には無≠オか存在しない。
未来や転生など、永久に存在しないのだ。
ニールもまた、悲痛そうな表情で2人を見つめていた。
ウキョウの願いは「無事に8月25日をシアが乗り切ること」だそうで、
見るからに心に決めた2人の様子を見れば、そこは神様の力を最大限に活用してやらなくてはならない。
この世界以上に、スムーズに関係が進む世界など、原初の世界を除いてはないだろう。
その結果でこの子たちが救われるのなら――
<私たちだけ存在し続けるのも、気が引けます。願いを叶えた分の報酬だけ頂いて…結果的には……何も…>
<あの子たちには、本当の最期のときまでの幸せを与えてあげたかった…>
それでも、どうにもできないことだってある。
だからこそ私たちは、せめて、2人ずっと一緒に居られる方法で、あなたたちの願いを叶えます。
シアを本当に幸せにできるのはウキョウしか居ない。
だから、あとはシアを任せますよ、ウキョウ。
どうか、幸せになって――
END.