桜の季節

□03
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この屯所には過保護なバカが沢山居るわけで――


朝飯の時間、起きてこない平助を呼びに行った久遠が席を立ち、5分が経過した。

まだ5分しか経ってないのにその場に居る全員はそわそわと心配そうな表情を浮かべる。


「久遠ちゃん、遅いと思わない?」
「あ、嗚呼…もしや何かの事件に巻き込まれて――」
「そりゃやべぇだろ!早く助けに行ったほうが」

「…落ち着け、平助が一緒だ。もし仮になんかあったなら、知らせが入んだろ」


もう一度言おう。
まだ5分しか経っていないのに、人間という生き物はどうしても自分の意思感覚で時間の経過を感じるらしい。



「斎藤、見てこい」

そして結局、無駄に広がった話に収集をつけるように、みんなと同じくそわそわとした土方が一言。
それを聞けば、一瞬だけその場は沈黙に包まれた。



そして沈黙の同意で、けっきょくその場の全員で久遠と平助を呼びに行くことになったのだ。





――――――――――――
―――――――――




一、総司、土方、左之、新八が平助の部屋に近づくなり、耳に届く2人の声。




「う、そ…こんなに、硬いよ……」

「…っ、久遠……!」

「平、助……っ!」

「だ、め…だってば、っ…久遠、」



「「「「「…………………」」」」」

聞こえてくるそんな会話に、一、総司、土方、左之、新八の5人は一気に凍りつく。

いまの会話でこの5人の中で浮かぶ行為はただひとつ。


一度顔を見合わせれば、出てくる言葉も答えもなく、一番に総司が行動に移した。



「ねぇ、平助、なにし、…て……?」

声をかけながら襖を開けば、不自然に途切れる総司の言葉。
そんな様子を不思議に思い、みんなも総司に続いて部屋の中を確認する。


「なっ!?」


総司の声を合図に、部屋のなかに居る2人の顔がこちらを向いた。
そして部屋を覗く側は再び凍りつく。

いや、怒りに震えている、というほうが正しい表現かもしれない。





部屋の中では、久遠が平助を布団に押し倒している状態だ。




「ひっ!土方さん!助けてくれよ!!」

そんな沈黙が続く中、それを破ったのは平助で、顔を真っ赤に染めながらこちらに向かって訴える。

「えー、誘ったのは平助だよ?」
平然と言ってのける久遠に、平助は顔を赤らめた。


「ふうん?平助、僕の久遠ちゃんの事誘ったんだ?」

「お前のじゃねえだろ総司」


「いや、だからっ!寝ぼけてて――!!」

「寝ぼけて久遠を布団に引きずり込むほどに意識していたという事か」

「ちがっ…違くないけど、違ぇって!!」






「で、ナニしてたの?」

「平助の肩こりをほぐしてたの」

「………あの体制でか?」


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