月光の雫

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一週間ぶりに目を覚まし、小腹が空いたのでパフェを食べていればアヤトの乱入。

今思えばこれが一番の原因だ。


アヤトが血をくれたせいで、中途半端に飲むのをやめた私の身体はもっと欲しいと疼く。


私自身が冷静でも、本能は、








――狂ったように求めてるんだ。








シュウが大きなぬいぐるみをくれた後、私の食べていたパフェは底を尽きた。

そんな状況にしょんぼりと気を落としていれば、シュウは光のごとく速さでケーキを焼いてくると告げ、厨房に走って行ったのだ。

アヤトもアヤトでそんなシュウ半ば呆れながら、アイアンメイデンの新調した物がそろそろ届く来る頃だから、と自分の部屋に戻って行った。


残された私は、まだ部屋に漂い残るアヤトの血の匂い、という誘惑を受けながらただひたすら待つ―――



というのも嫌なので、誘惑の香りの残った自室を抜け出し、さっそくシュウ兄ちゃんの居る厨房に向かおうと思う。





「マイスウィートエンジェル!!!」

「げっ……」


長い廊下を進んでいれば、さっそく会いたくない人物(?)に出くわした……。


どうしよう。テンションが下がる。

目の前で両腕を広げてくる奴を見れば見るほどテンションと神経がすり減る。




そしてこうなった今、私のやる事はひとつだ。


私はそのまま腕を広げて近づいてくる変態の腕の中に飛び込む―――












わけもなく、寸前でコースを変えて横をすり抜ける…。


そこからは逃れるべく全力疾走だ。


走って、廊下の突き当たりを曲がろうとしたその刹那、不意に香る、血の匂い――。


「っ…」

それに釣られて、全力で動いていた足は急停止した。



「んふ、やーっぱり…欲しいんでしょ?コレ」


「…、…ライト……」



後ろを振り返れば変態……もとい、ライト兄の姿。

異様なのは、その腕から誘うような真っ赤な血が流れている事。


ゴクリ、と喉を鳴らして生唾を飲み込めば、ライトの機嫌は一層よくなる。



「さっきから、アヤトの血の匂いがリリのカラダからするんだけど…この小悪魔ちゃんはアヤトと一体ナニをシたのかなぁ」


いつものように明るい声色。
ニッと浮かべる妖しい笑顔。

それら全てが―――黒い!とにかく黒い!



楽しそうに笑うライトとは裏腹に、リリは自分に対するお仕置き≠ネどという嫌な単語が脳裏を過り、顔を引き攣らせる。



仕方がないので、逆の立場で考えてみる。


嫌がれば嫌がるほどそれは煽る行動へと繋がる。

逃げようとすれば、縛る。

逆らえば―――




――噛まれる!!




というか、私ならそうする。


……なんていう兄だ。最低だ。

…あれ、今私の立場になって考えてみたから、私もライトと同類?…それはやだなぁ…。



なんてのんきな事を考えて、気づいた時には壁とライトに挟まれていて、逃げ道を失っていた。


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