短編

□噂と現実
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重ねられたタブのひとつに映し出されるBBSのページ画面。
彼はそれに書かれたものに目を通し、スクロールさせながら口角を上げ、ニヤリと不敵な笑みを零した。



――――――――
―――――





「オハヨ〜」

登校中に愛おしい主人公の姿を見つければすぐさま駆け寄り蛇のように絡みつく。
主人公はオレの腕の中で小さな悲鳴を上げ、その状況に対して頬を赤らめる。


「朝から登校なんて珍しいね」

「んー、ちょっとイイコトがあったからネ〜」

タクミ独特の伸び伸びとした口調と現在の状態が登校中の生徒の注目の的となる。

ただでさえタクミは容姿と共に"有名人"であるからして、一部の視線が主人公へと痛い視線が突き刺さる。


暫くしてようやくタクミが主人公の異変に気づく。
「ん?どぉしたの?」

「いや、そろそろ、離れてくれないかな…」

「なァんで?オレ達の、仲デショ?
気にするコトなんて、なァんにもないじゃん?」
ククッと喉を鳴らして主人公の耳元で笑うタクミに、主人公は更に顔を火照らせる

「なっ、何誤解を招くような言い方してるのっ」

「あっれ〜?
顔が真っ赤だけど熱でもあるのかナ〜?」


「なっ!無いから!熱なんてないから離れて!!」

やんわりと押し返せばタクミは素直に離れる。

「もぉ〜
冷たいなぁ、主人公チャンは」

「そんな事ないから、ほら、ちゃんと歩いて!遅刻しちゃうよ!」
その場に留まり、中々足を進めないタクミの腕を強引に引く。



「ほら、だから言ったでしょ?」

「嘘だろ!?」

「だから付き合ってるんだって」

「今の見たでしょ?」


「え…」
不意に耳に入る周りの言葉に主人公は硬直する。

「ククッ…主人公ってばダイタンだねぇ?
わざわざ登校中の生徒がわんさか居るこの状況で、腕組みたいなんてサ」


「え?ちょ、私そんな事言ってないでしょ!?!?」

「ホラ、早く歩かないと遅刻しちゃうぞ〜」

「えぇ!?それは私の台詞でしょ!?」

タクミの声のボリュームがいつもよりあからさまに大きく聞こえるのは気のせいでありたいと思う主人公の気持ちをよそに、噂というものは異常なまでに広まるのが早い。

一瞬にして起こった状況に着いていけない主人公が選んだ今やるべき事は大人しくタクミ君と学校へと向かう事だった。





「ん〜
今日はナニが書き込まれてるか楽しみ〜」

「何が??」

「オコサマが知ったら、耐えられないくらいカゲキなコト、かもよ〜?」

「っ!?!?//」

「クククッ、こんなんなら、朝から登校するのも、悪くないかも」



END


+おまけ+


日課になりつつあるBBSの書き込みチェック。

「ククッ…早くオレのモノになっちゃえばいーのに」

誰が流したのか、今朝の事がオレと主人公の恋人疑惑として話題になっている。


「さぁて、明日はナニを仕掛けようか」





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