短編

□傍にあるもの
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「あれ?立夏??そんな所で何してるの?」


主人公の教室の前の廊下でうずくまる立夏の姿を見た主人公が、傍へと駆け寄る

「主人公ちゃん!?しー!!」

人差し指を唇に当て、慌てる立夏に、主人公がその状況を理解するのに時間はかからなかった。

「あ…またイタズラ?」

「そうそう!恭介のヘッドフォンを隠したんだけど、無い事に気づいたらどんな反応するかと思って!」


立夏と主人公は教室の前で扉を少し開け、バレないように中を覗き込む。

「嗚呼、それは少し気になるかも」

「でしょ!
 あれ、結構お気に入りらしいからさ。
 それに、いつもは肌身離さず首に付けてるから、めったにないチャンスだよ!」


「で、どこに隠したの?」

「ふふ、そーれーはーねっ」


途中で言葉を区切って立夏はニヤリとイタズラな笑みをいっぱいに浮かべる。







「秘密だよー!」

「えーずるいよー」

「それを言ったらつまらないじゃない!
 あ、ほら恭介来たよ!」

「もう…」


そして二人はじっと一点を見つめ続ける。



「ん…?……ん??」

教室の中を覗けば、恭介はその異変に気づいたようで机の上を見渡す。


「ぷっ…」
「わ、笑ったら失礼だよ…っ」
「だって、あの慌てっぷり…!!」




「あれ…??」
次に一生懸命にバッグの中を探す恭介。


「……こんな事するのは…立夏、だな…」




「まずい!逃げろー!!」
「へ?」

そのまま立夏は主人公の腕を掴み、廊下を全速力で走る


「こら立夏待てー!!」


「待つわけないでしょー馬鹿恭介ー!!」

「なっ!?」




「こら。
廊下で走って怪我でもしたらどうするんですか」

そこにちょうど酉水先生と鉢合わせ、後から来ていた恭介が足止めを食らう。













――――――――
―――――






「はぁ、はぁ…」

「はぁはぁ…」


青空の広がる屋上に来た二人はベンチで息を整える

「酉水先生のおかげで助かった」

「…確かに……」


「うーん、それにしても今日は反応イマイチだったなぁ…」

「イマイチって…」


「なんかもう、ボクのイタズラ。ってバレちゃってたしー」

むぅ。と頬を膨らませて立夏は拗ねる。
どうも、結果はかなり宜しくないらしい。


「立夏がイタズラばっかりしてるから悪いんだよ」


「……やっぱり一番反応が面白いのって…」

不意に立夏が主人公をみつめる視線を感じた。

「…あはは、私が一番面白いんだ……」

「そうそう!
さすがよくわかってるね!主人公ちゃん♪」


「なんか複雑だなぁ…
あ、それより、どこに隠したの?」


「恭介の机の中だよ」

「え?そんな近くに??」

「うん!
近くにあるものほど気づかない≠チてよく言うじゃない!」

「ああ、確かに…
 …恭介に知らせてあげよう。」

ケータイを取出し、メールの新規送信画面を開く。
宛先は勿論恭介で…



「えー教えちゃうの?!?!」
「う、うん…」


「ねぇ…」

「ん??」
立夏は主人公がケータイを握っている手を押さえる



「今はまだ、ボクを見て…
せっかく二人きりになれたんだよ?」

「立夏…」

立夏の行動、そして言葉に胸の鼓動が早まるのを感じた。


「さっきボク、近くにあるものほど気づかない≠チて言ったよね?」

いつもは見せない真剣な表情で主人公を見つめる。

『うん』



「だけど、ボクはちゃんと気づいてるよ」

「立夏…」


「主人公ちゃん…」


「その続き…言って…?」


「っ///
 …すっ…好き、だよ…っ…」


「私もだよ」


「ずっと一緒に居ようね」

「約束だよ?」








END








*おまけ*





「主人公ちゃん…もっと…」

「んっ…ちゅっ…」



この状況すっげぇ出辛いんだけど、俺のヘッドフォンどこ!?



忘れ去られた恭介であった。




*END*

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