短編

□お揃い
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「主人公、」

久々のウキョウとのデート。

…とは言っても、ウキョウの家にお邪魔して、2人でほのぼのと過ごす時間。
でもそれさえも、私にとっては特別で、幸福な時間。


「どうしたの?」

ウキョウがそう切り出したのは、撮った写真を見せてもらい、一段落着いて冷めた私の紅茶とウキョウの飲むコーヒーを淹れ直した直後。


「…コレ、俺もやろうかな、って」

そう言って彼の手は、私の髪に触れた。

正確には、私が左側で結んでいる、三つ編みに――



「へ?」
唐突すぎて、間抜けな声が私の口から漏れる。

そして私の視線は、自然とウキョウの綺麗で長い髪に向けられた。


「…というか、やってほしいな…って……」
頬を染め、若干俯き加減にウキョウは言う。

そんな照れるウキョウに、私の口元は自然と緩んだ。


「お揃い、嬉しいよ!」
ウキョウの言ってくれた言葉がどこか嬉しくて、私はウキョウに笑顔を向けた。


そんな同意を示せば、さっそくと言わんばかりにウキョウは瞳を輝かせた。




―――――――――
―――――



ウキョウは少し緊張気味に床に正座。
固くなっているウキョウにくすりと笑みが零れた。

私はウキョウとの身長差に合わせ、ソファから彼の髪にそっと触れる。
手が触れれば、ウキョウの肩が一瞬びくりと震え、耳まで真っ赤に染まった。


サラサラ、キラキラしたエメラルドのような髪。
正直、女の私より綺麗で、立場を失くしてしまう。

一度ブラッシングをしたが、それさえも無意味なほどだ。

そんな髪を一束だけ掴み、三つに分けて、編みこんで行く。


こんなにも歪むことのないように、丁寧に、綺麗に三つ編みをするなんて生まれて初めてだ。


最後に、ポーチから取り出しておいた予備で持ち歩いているゴムでその髪を留める。


完成すればウキョウは鏡を見ながら、子供のように、嬉しそうにはしゃいだ。
「ありがとう!」

キラキラと輝くような笑顔でウキョウは私を見る。


「どういたしまして。ほら、前髪が乱れてるよ」

ウキョウにそっと手を伸ばし、前髪を整える。
そうすればウキョウは恥ずかしそうに俯く。
直後、俯いた場所から鼻を啜る音が漏れた。


「…ウキョウ?泣いてるの?」

「だって、お揃い、嬉しくて…」
涙声で、だけどはっきりと言われたその言葉に、思わずドキリと心臓が騒ぐ。

「情けないよね、こんなことで泣くなんて…」
次に、君の前だといつも泣いてるな、俺。とため息交じりに聞こえた。


「ううん、私も嬉しいよ。ウキョウ、凄く似合ってる」

「ん、ありがと…主人公も、すごく可愛い」

ウキョウが熱っぽく私に言えば、どちらともなく重なる唇。
ちゅっと音を立てたリップノイズは、部屋に小さく響いた。


「ねぇ、ほら、一緒に写真撮ろうよ!」

せっかくだし、そう言って主人公はウキョウに並んで自分のケータイカメラをかざす。

プロの写真家をケータイカメラなんかで撮ろうとする自分に内心苦笑いしながらも、ウキョウもそんな日常的な幸せに微笑んでくれて、私の押したケータイのシャッター音が部屋に響いた。





次にウキョウに会ったとき、ウキョウの髪の右端、私の髪とは反対側には、歪んで揺れる三つ編みが視界に入った。

そんな彼の姿に思わず笑みが零れる。

それはきっと、私の恋人だからこそできる、私たちのお揃い。







――――――――――――

あとがき

ずっと思ってたんですよ!
ウキョウは主人公好きすぎてお揃いにしたんだと←
きっとそうだと信じて疑わず、出会いのスチル(現実)に目を瞑る管理人。

多分これ関連でもう一本短編書くので待っててください。


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