短編

□commit a crime
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何度も世界を廻って、同じことを繰り返して、胸が張り裂けそうなほどの痛みを嫌というほど味わった。


残酷な死を通して“俺”が壊れて、“オレ”が生まれる。


限られた短い時間の中で、オレが存在することによってウキョウの願いが叶うことは更に困難になっている。


それでも、オレだってあいつを…主人公を心の底から愛していることに変わりはなくて。
その終わりはやっとやってきた。

ウキョウの願いが叶って、主人公と迎えた8月26日。




「主人公…」


主人公は2人のウキョウを受け入れてくれて、きっと幸せな未来が待っていると…そう信じたかった…。



オレを何度も死に引きずり込む原因とも言えよう、厄介な神様ももう傍には居ない。

オレが主人公を殺す必要ももうない。



「なあ…返事くらい、しろよ…」


だからこそ今、この場にあの神様が傍に居ないのは当然か…だってもうウキョウの望みは叶ったんだから…。

こんな状況でオレの頭はそんなことをぼんやりと思って、足元に広がる鮮明な赤を瞳に映す。


けっきょく、8月25日を乗り越えても、相反する存在である“おれたち”が同じ世界で存在を共にすることは、許されない。


「主人公…何でおまえは、…動かねェんだよ…」



いつの間にかオレの頬に雫が伝い、自分が泣いている事に気付いた。

冷たくなった主人公の身体を壊さないようにそっと抱き締める。

同時に主人公から溢れた血液がオレを赤に染め上げた。


もう一度その優しい声でオレの名前を呼んで欲しくて、
キラキラと純粋に世界を映す綺麗な瞳にオレを映して欲しくて、
全てを包み込むような温かい笑顔を向けて欲しくて…


「主人公、愛してる…オレも、表の俺も」


オレは冷たくなった主人公の唇に自分の唇を重ねた。



だから、また――




「また、別の世界で」



〜commit a crime〜

例えそれが罪でも、オレはおまえを愛してる。




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