中篇

□02
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厨房に籠っているであろう、シンにも会いたかったが、それはさすがに私の心情的に持ちそうもないと判断した。
そうじゃなくても、この世界では一般客である私が厨房になど入ることは許されないだろう。


チラリと視線を移してワカさんを見る。
ワカさんは、どの世界に行ってもキャラが違って面白い。


そんな騒がしい冥土の羊を最後に見渡し、会計を済ませる。
会計をしたのはトーマで、普段の営業ではありえないことを言った。

「また、…来てくださいね」

「…トーマ?」

「あ、すみません…。なんか、君の前だと調子狂う…」

もちろんいい意味で、と寂しそうにトーマは付け足した。


「…また、来ますよ、絶対。」
たとえこの世界のこの場所じゃなくても…。絶対。

「そっか。待ってます」


最後に笑顔をかわして、私は冥土の羊を後にした。





「ねえ!」

冥土の羊を出てすぐ、背後から声がかかり、振り返れば視界に映るのはウキョウの姿。
私を追って、冥土の羊を出たのだろう。


「病院、どうだった?」

「あ、うん…なんともないって…ただの切り傷。」
…多分。

「そっか、よかった」
心底安心したように、ウキョウはふぅ、とため息を吐いた。



「そうだ、もしリカに山荘に誘われても、絶対に着いて行ったらダメだからね」

「え…」

…なんで、どうして……。
私の中で、ウキョウへの疑問が大きくなる。
私を知らないはずのウキョウ。

その彼はどうして……


「……今、シアは……トーマと付き合ってるの?」
真剣な面持ちで、ウキョウは不意にそう言った。


「…なんで?」

「いや、…こっちの話。気にしなくていいよ」

そうは言ったものの、気になるのか、ウキョウは顎に手を当てて何か考える素振りを見せた。



「…ウキョウは、ミネと付き合ってるの?」

「えっ!?ど、どうして…?」

私が言った言葉は、衝撃が大きかったようで、ウキョウは大げさに慌てる。
…まぁ、私だって、同じ質問をしただけなのだけど…。


「…こっちの話だから気にしないで」

「え、あ…うん。」


暫くの沈黙が続けば、シアから別れを告げた。


最後に「ウキョウこそ、山荘には行かないで」と言い残して。




―――あれ?どうしてウキョウは、私の名前……


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