中篇
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熱い…!!
鼻には焼け焦げる臭いが纏わりつく――。
視界は赤と濃いオレンジの揺らめく色に染まっている。
次の瞬間、大きな音を立て、その世界は崩れ落ちた―――。
「ウキョウ…!!」
叫びながら勢いよくばっ!と身体を起こせば、雲ひとつない青空が私を包んだ。
眩しい太陽は私に降りかかり、今までの光景が悪夢だと思い知らせるには充分だった。
頬に流れ落ちる雫を、服の袖で雑に拭う。
それから眠っていた茂みから起き上がり、服についた葉っぱを掃う。
身体はそれまでの冷や汗で、心身共に気分のいいものではなかった。
このまま私独りで居れば、確実に狂う=B
気分転換も兼ねて、人気のある場所へと移動した。
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―――――
暫く歩いていれば、突然落ち着いていたはずの風が、突然強く吹いた。
「ん……」
思わず乱れる髪を押さえ、ふと視線を向ければ、そこはザリガニ公園で―――
「…ウキョウ?」
目に入ったのは公園の奥にある池の傍で寝転ぶ、見覚えのある彼。
気づけば足はそこへと進んでいた。
閉ざされた瞳、長い睫毛。
規則正しく揺れる鼓動。
微かに風に靡く髪。
「綺麗…」
そう、一言で言うならその言葉が適している。
帽子を被ったまま寝ているが、既にその帽子は意味など為していないだろう。
寝るのに邪魔な位置にあるその帽子を退けて、その流れるような髪にそっと触れる。
髪は、私の指を流れ落ちた。
無防備に開いた口からは、すぅ、すぅ、と寝息が漏れる…。
<…シア?>
ルナが私に話しかけたのがわかった。
それでも、ついさっき見た夢のせいだろうか、ウキョウの身体は、私の影に隠れる。
影は濃くなり、私の唇はウキョウの唇へと近づく。
あと1センチ――…
「おわっ!?!?」
「っ!?」
あと少しで触れようとした瞬間、ウキョウは目を覚ましてしまった。
顔を真っ赤に染めて、触れてもいない唇を手の甲で押さえる。
…乙女みたいだ。
「あの、ごめんなさい…なにも、してないから…」
私の口から、咄嗟に出た言葉。
嘘ではないが、言ってて少し、悲しくなる。
「心臓、止まるかと思った…」
そう言ってウキョウは、自分を落ち着かせようと必死になっていた。
「…ほんとうに、私、何も……」
「うん、大丈夫だよ。それに、シアにだったら何されても平気だしね」
自分で仕掛けておいてなんだけど、ウキョウのその言葉に、私は救われた。
真面目にそんな甘い台詞を吐くウキョウに、顔が赤くなっていてもおかしくはない。
それを隠そうと定位置を離れた帽子を手渡せば、問題が発生したのはそのときだ。
「あ、ありが――うわっ!!!」
「うきょ…!!」
飲み込まれるように倒れる彼に、思わず手を伸ばす――
バッシャーン!!
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