中篇

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「この前、神社で君に会ったときに、ニールに言われたんだ。」


シアはこの世界のシアではない≠チて。



ウキョウはそう言って、私に話を始めた。



――――――――
―――――

こんな話が信じられるだろうか。
それが最初に私のなかに浮かんだ言葉だ。


「…じゃあ、ウキョウは…私のために……」

「信じられないだろうけどね」
苦笑いをしながら、ウキョウは言う。


ウキョウの口から紡がれる言葉を、私は黙って、頬を濡らしながら聞くことしかできなかった。
そんな私を慰めるように、背中を擦ってようやくそこまで話し終えた。


ウキョウは私と共に、一緒に幸せだった世界に居た。
だけど、8月1日の大学の、実験棟の爆発事故でウキョウは私を失う。
そして病院に搬送された私は意識不明のまま、8月25日、息を引き取った。


そのとき、ウキョウは私を完全に失った。

それでもウキョウは諦めきれずに、出会った神様であるニールと共に、私が無事に8月25日を乗り切るのを見届けようと、何度も何度も、世界を移動した。


だけど、それはそう簡単にはいかない。
元々の、その世界の住人ではない存在は、世界が排除しようと必死に追い出す。

つまり、死が襲い掛かってくる。


だから、25日を迎える前に自分が死んでしまう。


その繰り返しでウキョウは狂った、らしい。



そして、問題がもうひとつ。

私もルナから聞いていた。


私とウキョウは、相反する存在だと。


一方が存在する限り、一方は存在できない。
だから、私とウキョウが揃って存在する世界は、今の話を聞くところ、2つしかないのだ。

そうじゃなくても、1つ…つまりは原初の世界しか存在しないと言われていただけあって、2つも存在するならそれは奇跡。


「…でも、この世界のシアじゃないって…どういうこと?」

「確かに、色々引っかかりはしたんだ。」

「駅前の通り魔事件を俺に警告してくれたり、山荘とか井戸のことだって…それに、俺の名前を知っていた…」


私は目の前に居るウキョウの話を聞いて、足りないピースを手に入れた。
これで、わからない部分の話は繋がった。

だから―――




「私の話、聞いてくれる…?」
静かに言えば、ウキョウはコクリと頷く。


「私も同じ。…ウキョウと恋人同士だった。…ある日……」



ある日、私は大学の用事で、どうしても書類を提出しなくてはならなくて…。
その日はウキョウとデートの約束をしていた日。

だからウキョウは、時間を合わせて大学まで私を迎えに来てくれたの。


8月1日。大学――



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