中篇

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太陽の光が降り注ぐ、よく晴れた日。
総司は縁側に腰掛けながら自身の膝に乗せたシアをぎゅっと抱きしめる。


もう随分長い時間、仕事に関わらせてもらえてない。

総司は咳をしながら、ヘラヘラと笑って大丈夫なのに、と愚痴を零す。




松本先生によって、総司は移動を言い渡された。


強く言う私の言葉に総司はどうにか従ってくれて、今は新選組から離れて一緒に療養中。




それは、ある日の出来事。


元々この世界に居ない存在だった私は、多少世界を変えたようで、総司はどこからその情報を聞いたのか、命を狙われている近藤さんの護衛に行くと刀を手に取った。

まあ、近藤さんが命を狙われてるのは日常的にも多いけど、こんなに強く情報が出たのは初めての事。
それに、ゲームではこんな情報は出てこなかった…。


つまりは、私の存在は、シナリオを変えた。




「大丈夫だよ」と安心させるように唇を重ねれば、総司は一瞬驚いたようにびくりと震えたが、嬉しそうにすり寄ってきた。


だけど、すぐにハッとしたように我に返り、バツが悪そうに私から離れて距離を取る。



「総司」

「………、…」

「総司、」

「…なあに」


弱弱しく俯いている彼にそっと近づき腕を回して抱きしめれば、総司の身体は強張った。


そして苦しそうに、必死に紡がれる、その言葉。



「シアちゃん、僕は…僕は労咳なんだ…いつまでもシアちゃんと一緒には居られない。」


その言葉を聞いて、シアは総司に回していた腕を緩めて視線を合わせる。
瞳を覗き込めば、綺麗なエメラルドの中に自分が写り込んでいるのがわかった。


「接吻だって……僕、シアちゃんに移したくないんだ…シアちゃんまで労咳で苦しむなんて、そんなの耐えられない…!」



労咳は他人に移る病気。

そんなの、はじめから知っていた。

だからこそ……



「!!シア、ちゃん……もしかして…!!」

総司が勘付いたのは、シアがニヤリと口角を上げた直後だ。


「どうして…そんな…!!」


苦い薬を嫌がる総司に、あえて口移しで飲ませたり、おはようやおやすみのキスは当たり前のように唇で交わす。


「ねえ、風邪ってさ、他人に移すと治るとか言うじゃん。これも治るかもよ?」

おどけた調子で言えば、どうも総司の機嫌はよくないようだ。



自分を責めているのは嫌でもわかって、だからこそ仕方なく、本心を曝け出す。

そのときのシアの雰囲気は独特で、誰も邪魔できないような、吸い込まれるような、そんな雰囲気。






「ずっと一緒に居るって、私は言った。総司はひとりじゃない」


史実上、沖田総司は近藤さんの死さえも知らずにひとりで死んだ。


「僕は…」


戦死なんていいモンじゃない。


「だって、愛してるもん、総司のこと」


孤独で、病気で苦しんで、誰も助けてくれない。


「僕も、シアちゃんを――」


そんな状況で死んだんだ。





「愛してる」





私は総司を、ひとりにはしない。



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