中篇
□05
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今日に限って不思議と動く身体。
2人はそれがどのような意味を示すのか、心のどこかで理解してた。
ぎゅっと手を繋いで、導かれるように森の中を進む。
その足取りは軽くて、たどり着いたその場所を見て思わず零れる笑顔。
目の前に広がる、宝石のような湖。
見たこともないような綺麗な花が咲いていて、その場だけ平和な時間が流れているような、幻想的なその場所。
いい場所見つけたね、そう言ってふたりで笑う。
湖の傍に腰を下ろして、空気が美味しいとか、そんな雑談に華を咲かせる。
どれくらい経ったかはわからない。
そんなとき、総司が唐突に言った。
「シアちゃん、僕、なんだか眠いや…歩きすぎて疲れちゃったのかな?膝枕して」
そう言って、私の膝にゴロゴロと猫のように甘えてくる。
なんとなく、嫌な予感はした。
「じゃあおやすみのキスは?」
「き、す…?ああ、接吻か!」
一瞬、カタカナに戸惑うも、理解すれば総司の行動は素早かった。
きっと、これが最後になるであろう、触れる唇。
膝に頭を乗せて、しっかりと繋がっている手。
「おやすみ、シアちゃん。傍に居てくれて、ありがとう…。どんなに離れようと、僕が最初で最後に愛したのは、シアちゃんだけだよ…」
いつまでも愛してる
そう告げて、総司は固く瞳を閉ざした。
それから、私の頬を伝う雫。
ソレはとめどなく溢れてきて、止める方法は見つからなかった。
それから暫く、泣き疲れたのか私にもだんだんと襲ってくる睡魔。
おやすみ、と重ねた総司の唇は冷たくて―――
「愛してるよ、総司」
でも、これで……いつまでも、ずっと、一緒だよ。
END.