竜の小説集

□連載予備軍短編集(恋姫以外)と過去拍手
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なんてことはないテンプレのような転生だった。

子供がトラックに轢かれそうになって、咄嗟に庇ったはいいものの即死。

気付けば神様がいて、転生させてやると言われ――あまりにもテンプレだったので、感動してとか、うっかりミスでとか若干期待してしまったのは個人的な秘密である――思わずチートな能力を願ってしまった。

今、考えてみれば相当に恥ずかしいというか、まだ中二病にかかってたのかと黒歴史に悶えるばかりである。

まぁ、それはさておき、神に願ったチートというのがネギまのどのキャラよりも高い魔力と気と才能とか、FFのマテリアとか、伝説の武器とか……社会人にもなって馬鹿なの俺?と思った。

神様はそんなチートで大丈夫か?と言ったが、大丈夫だ。問題ない。

チートにはしたが別に原作ブレイクとかハーレムを作るとかは毛ほども考えてないし。

ただ……ただ、一度でいいから大きな力をふるってみたい、拳銃を撃ってみたいとか、一般人だった自分にはない力を使ってみたい……そう思っただけ。

なのに――














「――なんで、アイマスの世界に転生するかなぁーーー!?」

目の前のPC画面には見覚えのある幾つかの事務所の名前。

アイマス――アイドルを目指す少女達が765プロという事務所に所属し、プロデューサーと共に成長していくあのアイドルマスターである。

戦闘や魔法どころか、現実の日本よりも若干ぶっ飛んだオタクで平和な日本……もとい世界。

貰ったチート能力が何一つ使えない世界に転生しちゃったよ。

こんな世界で魔法とか言ったら童貞乙と言われかねないな……。

「いや、変だと思ったんだよ?一般家庭だったのはともかく、麻帆良学園ないなーとか、もしかしたら型月かと思って出てきた街とか探したけどないし、じゃあリリカルなのはかと魔力出しても一向に誰も来ないし……」

今更ながらに神様がそんなチートで大丈夫か?って言った意味が分かったわ。

ネタじゃなかったのか……。

とはいえ、アイドルになりたくはないな……そもそも765プロに男のアイドルが入れるか知らないし、余程アイドルになりたかったり、歌が好きじゃなきゃできない仕事だからな。

……そもそも戦闘系のチートだからアイドルに使えないし。

「うーん。とりあえず原作の何年前か調べるかな。原作に関わるかも決めてないし、貰ったチートで何か就職に使えそうなの考えないと……なんか、一気に世知辛くなった気がする」

伝説の武器とかもう伝説の武器wwって感じになっちゃったし。

売れるわけもないから、物置行きだな。

そう結論づけて、背中に哀愁を漂わせながら準備を始める俺だった。










「よし!これで就職活動には困らない!」

思わずガッツポーズをして目の前に並べられているカードや賞状等を見る。

そこにあるのは武道の段位認定、アメリカの大学の卒業証書、運転免許、パソコン、危険物取り扱い、漢字検定、TOEIC、宅検、など総数50にも及ぶ資格や検定のオンパレード。

うん、気づいたら当初の目的を忘れて脇道に逸れてたね。

あんまりにも資格とか取るのが楽しくて原作とか忘れてたわ。

ちなみに、前回から5年位経ってたりする。

戦闘チートでもなんとかなったよ。

特にリリカルなのはとかで出てた分割思考とか、FFのステータスUPとか補助系のマテリアね。

複数の事を同時進行で処理しながらリジェネ(減ったそばから回復していく魔法)で24時間活動したり、FFでいう運のステータスを上げれば良いことばっかだし。

「後は出会いかなー。といっても、今更原作に関わるのもねぇ……仕事なんて選び放題だし」

どうしたものかと悩みつつ、とりあえず気分転換に外出をしようかと広げていたものを片付けて外出する。

運のステータスも上げたし、角を曲がれば原作キャラとぶつかったり――

「いてて……。あ、すみません!」

「しちゃったよ。おい……」

目の前で片手に本を抱えながら尻餅をつく美少年のような美少女――間違いなく原作キャラの菊池真である。

「へ?」

「いや、こちらこそすまなかった。怪我はないかい?お嬢さん」

「お、お嬢さん?って……ボク?」

「他に誰がいるんだ?ほら、掴まって」

手を掴んで立ち上がらせると、何故か真は顔が赤かった。

原作知識があるから自分としては女性にしか見えないのでそう扱ったが、まさかこんなに効果があるとは……いざ女性扱いされて脳の処理が追いつかなくなったっぽいな。

「あ、あの!」

「何かな?」

「ちょ、ちょっと来てもらっていいですか!?」

「は?」

突然手を引っ張られ、近くにあった765プロと書かれた建物に連れて行かれる。

この後、真が男を連れてきたと勘違いして騒ぎになったり、何故か765プロのアイドルに紹介されたり、社長に勧誘されたりするが、それはまた別の話。
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