竜の小説集

□恋姫†無双〜白馬の主従〜まとめ(完結)
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白蓮達の後方からの突撃にによって黄巾軍はついに崩壊した。

挟撃によって散々なまでに相手を見事なまでに叩きのめす様は正に見事といったものである。

戦いは公孫賛・北郷軍の勝利によって幕を閉じたのだった。
















「もう行くのか」

帰ってきた白蓮を労うのもそこそこに、月渓は陣を去ろうとする星に声をかける。

「うむ。此度の戦で心残りもなくなった。暫くは仕えるに足る英雄を探そうと思う」

星の言葉に月渓は惜しいなと苦笑をこぼす。

「やはりお嬢では主には足らんか…趙雲殿がいると大分助かるのだがな」

「すまんな。関靖殿のもとで戦をするのも楽しかったが、やはり自らの目で認めた人物に仕えたい」

「そうか……ではこれを受け取れ。餞別だ」

そう言って星に巾着程の袋を渡す。開けてみるとそこには暫く旅をできるくらいの路銀が入っていた。

「かたじけない」

「それでも見合わんくらいなのだがな。それと、俺のことは月渓と呼んでくれ。趙雲殿には真名で呼んでほしい」

その言葉に、星は破顔する。真名とは信頼できる認めた者にしか呼ぶことを許さぬ名前だからである。

「それこそ金銀に勝るものだ。貴方ほどの武人から信をもらえるとは…ならば、私のことは星と」

「うむ。では星殿、また会うことを楽しみにしている。貴殿と共に戦えてよかった」

「私もだ。月渓殿。それでは」

星は月渓に別れを告げて、陣を去って行った。

「行ったのか」

星を見送っていた月渓に白蓮がやってきて話しかける。

「ええ、残念でしたが…でも友諠を結ぶことはできました」

「友諠?」

「互いに真名で呼ぶことを許したんですよ」

「へー真名をねぇ…良かったじゃないか」

と、口では言っているが、白蓮はジト目で不機嫌そうにする。

「ん?お嬢。もしかして妬いてるんですか?」

「なっ!///」

にやりと笑いながら指摘すると、白蓮は顔を赤くした。

「べ、別に私は妬いてないぞ。ただ…」

「ただ?」

「ええ〜い、こっぱずかしいことをいわせるんじゃないっ!///


恥ずかしくなった白蓮は慌てて陣内に戻り後には苦笑いしている月渓が残された。

「素直じゃないなぁお嬢も…まぁ、そんなところも可愛いけどね」





黄巾軍との戦いも終わり、仮初めながらも平穏を手にした矢先。

大陸全土を揺るがす大事件が起こった。

「霊帝が…」

事の大きさに白蓮も言葉を失う。

「ええ、しかも大将軍何進の一派と、宦官たちの一派に分かれ後継争いを」

「それでどうなった」

「結局、何進は殺されました。ただ、最終的に勝ったのは併州の牧、董卓です」

「戦になるのか?」

再び戦乱が巻き起こることに不安を隠せない白蓮に月渓は頷く。

「十中八九起こるでしょうね。聞いた話だと袁紹殿が大陸の諸侯に董卓討伐を呼び掛けてるそうです。じきうちにも来るでしょう」

「本初が…そうか」

おそらく名門だからとかそんな理由で始めたんだろうなーあのア本初とか政務やら軍務やらを押し付けられてる某将軍の苦労を思ったが二人は話を進める。

「で、お嬢。参加しますか?」

「ん〜気が進まないけどなぁ。董卓は悪政を敷いてるというし」

「ようはほっとけないんでしょう?人が良いんだから」

「まぁ、なんだ…苦労をかける」

どちらも根がお人良しなため最初から参加に否は無かったのだ。

ただ、地方の一勢力が参加することの利益と不利益、戦の苦労にどちらともなく苦笑いを浮かべた。

「じゃ、俺は軍を出せるようにしてきます。戦続きで厳しいですけど領地は増えましたし。一万ちょっとは出せるでしょう」

「頼んだ。それにしても…」

「ええ」

「「気が重い…」」

阿吽の呼吸で溜息を吐く。

白蓮はこれから袁紹によって起こるであろう苦労を思って。

月渓はそれによって聞かされるであろう白蓮や顔良の愚痴を思って。

「やめたくなってきましたよ…」

「言うな…」

今まさに主従の心は一致していた。





「いや、まさに予想通りだな」

そう言ってため息をつく月渓の眼前にはーーー

「ふんっ」

「キィーー!!」

「いい加減にしろって二人とも〜」

軍議そっちのけで喧嘩する曹操と袁紹、そして健気に仲裁する白蓮。

彼女の心労を思い、月渓は思わず涙した。















董卓討伐の為に集まった連合軍。早速、軍議をするべく主だった者たちが集まった。

月渓も白蓮について行ったが、軍議を聞くというよりは世間話をするためである。

「久しぶりだな。二人とも」

「おー!関靖じゃん」

「関靖さん。お久しぶりです」

白蓮達が軍議をするなか月渓が話かけたのは袁家の顔良と文醜だった。

文醜はもともと気さくな性格だったので最初からなれなれしかったが、顔良は違った。

見た瞬間、互いに感じ取ったのである。苦労人のシンパシーを。

ともかく、領地が近いこともあり、それなりに交流があるのだ。

「顔良は相変わらず大変そうだな。今回も、名門袁家がーとかだろう?」

「あはは、さすがですね」

正確な指摘に顔良も苦笑いを浮かべる。

「文醜も仕事手伝ってやれよ?」

「わかってるって!」

からからと笑う文醜に正直期待は薄かった。

「それにしても、相変わらず仲がわるいな…あの二人」

「会うたびにですからねぇ」

「よくやるよなぁ」

三人の視線の先には袁紹と曹操、にらみ合っている。

「あ〜、またお嬢が仲裁にはいってるよ」

「すいません。いつも」

「顔良のせいじゃないさ。それにしてもお嬢以外は止めないのか…」

「孫権とかはだんまりだもんなぁ」

その後、一刀などが仲裁に加わり一旦おさまるが。

「そういうオチか…」

「姫ったら…」

「さすがにあたいもあれは…」

連合軍には優れた統率者が必要であり、それは強くて、美しくて、門地が高い、そうまさにそれは自分である!と袁紹がおバカ極まりない発言をかましてしまった。

諸侯の反応もみな白けていた。

結局、なにも決まらないまま皆軍議の席から去って行った。

おそらく、配置など顔良が考えて指示を出すのだろうと悟った月渓は若干涙目の彼女に声をかける。

「まぁ、俺やお嬢が手伝うから…頑張れ」

「なんとかなるって斗詩」

「ありがとう。文ちゃん、関靖さん」





「ふ〜とりあえずこんなもんだな」

「そうですね。後は、各陣に伝令を送るだけです」

「はぁ〜本当にお二人ともありがとうございました」

諸侯の配置を決め終えて一息つく三人。

なぜ三人かというと文醜は頭脳労働は戦力外であるため参加していないのだ。

ちなみに、配置(主な)は前曲が曹操軍と孫権軍。右翼は公孫賛軍、左翼は西涼軍、本陣は袁紹軍、後曲は北郷軍である。

白蓮や月渓としては、北郷軍を後曲にすると背後がもろくなるので別の場所に配置したかったのだが、袁紹の門地が低い云々によってあえなく却下された。

「さて、お嬢。うちも準備に戻りましょう。大将と副官が長く不在なのもよくない」

「そうだな。顔良、私たちはこれで戻るぞ」

そう言って、自陣に戻る二人に顔良は再度礼を述べる。

「本当にありがとうございました。本来なら私一人でやることだったのに」

「なぁに、決まらないと困るしな。なぁ、月渓?」

「えぇ、一応今は同士ですし。それと顔良、なんならうちで働くか?」

「あははは、お誘いは嬉しいですけど遠慮しておきます」

実際は、正直それもいいなーとか思いながら二人を見送る顔良だった。














自陣に戻った月渓と白蓮はすぐに進軍の準備を整えた。そのさい、どこかの陣で騒ぎがあったらしいが割愛する。

準備を終えた連合軍はシ水関に向けて進軍を開始、到着と共に攻撃を始めた。

「こりゃ、前曲じゃなくて良かったな」

「ですね」

策もなく正面突破をさせられてる前曲を気の毒そうに見る白蓮。

月渓も心からそれに同意する。

「相手がこもってる以上、曹操や孫権でもどうしようもありませんからねぇ」「北郷たちも案外後曲でよかったかもな」

「確かに。でも後曲が少数の北郷軍、本陣はあの袁紹…後ろから奇襲でもされたら…」

ジャァン!ジャァン!ジャァン!

そこまで言ったところで突如として銅鑼が鳴り響き、背後に水関の守将である華雄が現れる。

「来たな…お前の言う通り」

「来ましたね…ほんとに」

不安が的中したことに若干頬を引きつらせながらも二人は対応をすぐに話し出した。





「どうする?北郷達に加勢するか?」

「防ぐくらいなら大丈夫でしょう。それよりも、奇襲に失敗した華雄軍に横から当たりましょう」

「横から?奴らが本陣を突っ切ってくるのか?」

「本陣…袁紹ですし」

「……あぁ」

「じゃ、横撃の準備を。それと…できれば華雄を討ちとりますねー」

「あぁ…て、オイ!大丈夫なのか!?」

ちょっとそこまでみたいなノリに白蓮は思わずのったがすぐに心配する。

いくら腕が立つといっても相手は華雄、関羽や趙雲のような化け物でもなければ簡単には討てないのだ。

だが、その心配は無用とばかりに月渓は笑った。

「できれば…ですよ。目的は華雄の足止めです。大将がいなければ曹操達がシ水関を落とすでしょう」

「ならいいが。その…なんだ…お前がいなくなると困るから気をつけてな」

「あ〜もうお嬢は可愛いなぁ」そう言って白蓮の頭を撫でると、彼女は真赤になって口をぱくぱくさせる。

「おっと、そろそろか。各部隊横撃用意!撤退する華雄軍に弓隊の斉射後突撃するぞ!!」

「「「応っ!」」」














「ちぃ、寡兵と侮ったか…全員が袁紹のようだったら楽だったものを」

一方、北郷軍を突破できなかった華雄軍はシ水関に戻るべく連合軍本陣を突っ切っていた。

混乱する袁紹軍をよそにたいした被害もなくこのまま合流できるかとも華雄は思ったがそうはいかなかった。

「将軍!」

「どうした?」

「敵右翼から攻撃がっ!我々の進路を塞ぐように横撃をかけてきます!」

「うろたえるなっ!戻ることを優先して突破しろ」

しかし、華雄が指示を出す間にも公孫賛軍は乱戦に持ち込むように攻め、華雄の元にも月渓が来た。

「華雄だな。俺は公孫賛が将、関靖。悪いがここで止めさせてもらう」

「ふん!貴様如き我が武のてきではない!!」

華雄は戦斧を振り上げ一刀両断しようとするが月渓は避けて華雄の隙を突く。

その後も何合と交えるが互いに決定的なものはなく、月渓が華雄を逃がさないように戦っているため勝負は長びいていく。

華雄軍の兵士たちも同様に乱戦から抜け出せず、戻る事を優先していたため次第に不利になっていった。

そして、遂に大将不在の水関は陥落。

華雄はその後、加勢に来た愛紗に打ち取られ。

華雄軍は追撃してきた北郷軍が加わった公孫賛軍に散々に討ち破られた。
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