竜の小説集

□卒業論文「後漢から西晋までの将軍号の変遷」
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はじめに
 古代中国の軍事制度を語る上で、将軍という官職を抜きに話すことはできない。その起源がいつからかなのかは断定できないが、本論で語る後漢等の時代より遥か昔より存在することは想像に難くない。
 前漢の武帝は高祖以来の対匈奴政策を転換し、大きな攻勢に出たのは歴史的にも有名なことではあるが、そのような大規模な戦いが行われたが故に将軍という官職が大きな変化を見せた。
 目的や役目、美称によってできた、それまでの実質的なものとは異なる将軍号の出現である。大きな功績を残したものはその名を将軍号と共に残すに至り、その過程で新たな将軍号が王朝の軍事制度、官職の位階に組み込まれた。
 また、将軍は政治的な権力を持つ官職とは異なり、権限と物理的な兵力を有する大きな力を持った官職でもあった。皇帝より与えられた権限は時に枠内に組み込まれながら枠外に存在し、皇帝でさえその影響を免れるものではない。
 そんな将軍という官職が大きな変化を見せたのは、大まかに分けて三つあると考えている。一つ目は、先述の前漢もそうではあるが、王奔の反乱、末期の群雄の争乱が起こる後漢である。前漢に続いて将軍は強大な権限を有していたが、外戚と宦官の権力抗争等において大いにその権限が活用されるようになった。
二つ目は魏、呉、蜀漢の三国鼎立の時代である。三国が大陸を統一するために常に争い、緊張状態が続いていたこの時代は将軍号が濫発された。そして、大きすぎる権限の縮小や三国それぞれ独自の将軍号が置かれるようになる。また、それらの多くの将軍号の序列がはっきりと決められるようになった。
三つ目は西晋の時代である。三国時代から西晋による統一が行われるまで同様に将軍号が濫発され、東晋に至ると虚号化してしまう。その変化の過程が西晋にあるのではないかと思う。
 王朝を揺らすような戦乱が起こり、常に戦争状態におちいっていた後漢から西晋までの将軍という官職、つまりは将軍号の変遷を探ることで、官職の内容の記述が少ない将軍がどのような権限や職務があったのか、どのように変化していったのか、どのような影響をそれぞれの王朝に与えたのかを考察していきたい。
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