竜の小説集

□web拍手連載:アイドルマスター
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――765プロにて

「小鳥くん。今日は大事なお客さんが来るから、一番良いお茶とお茶受けを頼むよ」

「はい。でも、どなたが来られるんですか?」

「昔からの友人でね。20年近い付き合いになるかな?たまに連絡をとるくらいだったんだが、時間ができたらしくてね」

肝心の名前を言わない高木社長に小鳥は釈然としないものの、言われた通りのものを用意する。

「でも、みんなを集めてまで歓迎するなんて、本当に誰なんでしょうね。律子さんは聞いてます?」

「いえ。でも、わざわざスケジュールを調整してまでみんなを集めたんですから、仕事に関係するような大物なんじゃないですか?」

高木社長の人脈の広さに驚かされることが何度かあった為、律子はそう考えていたが、実際はその想像を超える人物である。

と、その時――

「すみません。13時から高木社長と会う約束をしていたんですが……」

ノックと共に、サングラスと帽子を被った青年が入ってくる。

「しょ、少々お待ち下さい。ただいま、高木を呼んできます」

話題の人物が自分とそう変わらないように見える青年であることに驚きながら、小鳥は高木社長を呼ぶべく社長室に向かう。

「おお!久しぶりだね!元気そうで何よりだ」

「高木社長もお変わりなく。今日は765プロのアイドル達に会えると聞いて楽しみにしていたんですよ」

親しげに話す二人に対して、結局正体が分からない律子と小鳥はやきもきしながらも、アイドル達が集まっている場所へと案内する……といっても、事務所自体が狭いので、先ほどからちらちらと覗いていたりしたのだが。

「社長。そちらが御友人の方ですか?」

アイドル達の相手をしていたプロデューサーが代表をして質問をする。

「うむ。さんざんもったいぶっていたから、皆も気になっていただろう」

「当然じゃないですか。いくら聞いても教えてもらえませんし」

「ホントだよー!でも、社長さんの友達だからもっとおじさんかと思った。ね、真美」

「うんうん」

「あらあら、二人ともお客様にそんなこと言ったらダメよ」

「あずさの言う通り。社長がわざわざ名を秘していたということは、それだけ大事な方であるということでしょう」

秘密にされていたことに不満を漏らす律子に亜美と真美も同調するが、あずさと貴音に窘められる。

「いやぁ、すまない。さすがに簡単に名前を出せなくてね。それに、その方がインパクトが大きいと思ってね。……では、紹介しよう。私の友人であり、アーティストの――」

紹介と共に、帽子とサングラスをとる颯馬。

そして、露わになった顔を見て、全員が度肝を抜かれた。

「――SOUMA君だ」

『……………………………』

全員が、あまりの驚きに言葉を失い固まってしまう。

日本どころか、世界にも知られるトップアーティストが目の前にいるのだから無理もない。

ゆるゆると動きながら、互いに頬を抓ったり、目を擦ってみたり、現実かどうかを確かめる。

『……きゃ』

「SOUMA君。耳をふさぎたまえ」

「あー。はい」

『キャ―――――――――――――――――――――――っ!!!!!!!!!!』

アイドル達の絶叫が響き渡る。

「う、嘘!本物のSOUMAだぁ!!」

「ま、まさか社長の知り合いが……」

「ま、真ちゃん。どうしよう」

「ああ、誰か色紙!サイン貰わないとっ!!」

「ど、どうしましょう!?私、変なところないかしら?」

「び、びっくりしたぁ……まさか社長の知り合いがあのSOUMAさんだなんて、ぇぇ!?」

「ふ、ふん。この伊織ちゃんに相応しいゲストじゃない」

「………………………」

「なんと、かような方が社長の御友人とは……」

亜美と真美は超有名人の登場に興奮を隠せず、律子はあまりのことに混乱し、雪歩は慌て、真はサインを貰おうと色紙を探し、あずさは自分の服装に変なところがないかと服装を直し、春香は驚きの余り転び、伊織は強がっているが人形のうさたんを抱き締め、千早は未だに開いた口がふさがらず、貴音は素直に驚いていた。

「あふぅ……。もう、みんなうるさいの……」

「美希!それどころじゃないぞ!社長の友達があのSOUMAだったんだよ!」

「そーま?」

その騒ぎに、ソファーで寝てしまっていた美希が起き、響に言われるがまま見ると、そこには確かに何度もTVで見たことのあるSOUMAがいた。

一瞬で目が覚めたのか、美希はパァっと嬉しそうな表情をすると、颯馬に駆け寄り抱きついた。

『あーーーー!?』

「ねぇねぇ、美希ね、すっごいSOUMAさんのファンなの!」

「ありがとう。星井美希ちゃんだよね」

「美希のこと知ってるの!?」

それを見た他の面々は叫び声をあげるが、美希はそれを気にせず、颯馬が自分を知っていることに喜色満面である。

「美希ずるいぞ!自分だってSOUMAのファンなんだからな!」

「ぼ、ボクだって!」

響と真も負けじと駆け寄り、自分のことをアピールしていく。

「はっはっはっ!やはりこうなってしまったか」

「そりゃこうなりますよ。なんたってあのSOUMAですからね」

「驚くのはまだ早いぞ。何故なら、これから暫くは彼が皆に指導してくれるんだからね」

『ええ――――――――――――――――――――――――――っ!!!!????』

本日二度目の絶叫が、765プロに響き渡った。














「…………………………」

「千早ちゃん?」

「これは……気絶してるわね」

千早が意識を取り戻すのは……もう暫く経ってからであった。










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