人狩り編

□第一章
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母『………ってるんだから!!早く起きなさ!』

いきなり部屋に入って来た母さんが、カーテンを開け放つ。初夏の太陽が俺の顔を焼きつける。

翼『うっ…』

母『人を待たすのがいい事だと思ってるの?!ご飯出来てるから早く起きてさっさと食べなさい!』

訂正しよう。このくらい母が怒っているという事は、既に二十回くらい俺を起こしてあとなのだろう。

翼『う〜…るさい…』

それでも俺は寝ぼけた頭で粘る。
枕の下に頭を入れる。ちょっとひんやりしてて、気持ちよかったり…


だが、その最終防衛ライン(?)も空しいくらいに軽く突破された。

母『さっさと……起きなさいっ!!』

翼『ひいっ?!』

襟首を掴まれほん投げられる。
鬼の形相と化した母に敵うものは、我が家にはいない。
俺は階段を素早くかけ降りた。

居間に行くと味噌汁の香りが鼻の中へとやってきた。

翼『ふむ、素晴らしい。朝の味噌汁の匂いは…』

父『そんな事はいいから、早く行きなさい。外で人待たしてるんだろう?』

新聞を読みながらモーニングコーヒーを堪能している父が言う。

翼『はい?』

意味がわからない。
いったいどうすれば、朝の味噌汁の香りが待ち人に変わるんだ?
…まだ寝ぼけてるみたいだ。
それにしても、だいたい朝の約束くらい、自分でしたなら覚えてるさ。

父『だってさっき女の子が翼を迎えにきたって…』

翼『………へーそーなんだ。』

ウチの父は、普段も朝から晩までジョーク(おやじギャグ)を言い続けてる。
芸術家には変な人が多いと言うが、父はまさにその通り。

すると、二階から母がドタバタと降りて来た。

母『外で女の子
が待ってるから、早く行きなさいってさっきからいってるでしょ!!』

えー!?初耳だよー!?


訂正しよう。多分母は言っていた。ただ、寝てる俺には何一つ伝わっていない。

翼『……って、うそぉ?!』
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