text (その他)
□Not Equal
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「…抱いて下さい」
目をそらさないで。怖がらないで。
でないと、あなたはまた軽い冗談と受け止めて、本気になんてしてくれないから。
「…冗談も大概にしろよ。言って良いことと悪いことがあるだろ」
ほらね。あなたはそうやって気づかない振りをする。
あなたの目が、ほんの一瞬だけ見開かれたの、見逃しませんでしたよ、わたし。
ほんとはわたしが、冗談なんかでこんな事言うはずないって、分かっているでしょう。
「…本気ですよ」
本気です。わたし、うそきらいなんです。うそなんて、つかないですよ、あなたにだけは。
「わたしを、抱いて下さい、ユーリ」
うそじゃないから。本気だから。だからお願いです。応えて下さい。
「…後悔しねぇな?」
気づいた時には、抱き上げられていた。
わたしを抱き上げる仕草は、なによりも優しかった。
ベッドにわたしを横たえるあなたが、とても愛しい。
きっちりと着込んだ服の襟元を、徐々に開いてゆくあなたの手に、心がふるえた。
私を見つめるあなたの瞳が、夜空のように深くて目が熱くなった。
ただ、それだけだったのに。
「…やめた」
「ぇ?」
ぬくもりが、ぱっと離れてゆく。
ぼんやりとした頭のわたしは、ばかみたいにあなたの背中を見つめるしかできない。
「泣いて、震えて。そんなヤツ抱けるかよ。覚悟ができてないなら、もう二度とあんな事言うな」
「…ちが、」
違う。そうじゃないんです。
否定しようと、起き上がった瞬間に、ポロリとひとつぶ涙が落ちた。
背中にすがりつこうと、伸ばした腕がかすかに振るえていた。
ばかですね。そんなんだから、きっとこの想いも伝わらないんです。
重力に逆らえずに落ちてゆく涙が作ったシミを、ただただ見つめるわたしのとなりに、あなたはゆっくりと腰を下ろした。
「…ごめんな、怖い思いさせちまったな」
さっき私の服を乱そうとした手が、今度は私の乱れた髪を直していく。
そうやって頭をなでるあなたが、どんな時より優しいなんて、
「…そんなの知りたくなかったです」
無理矢理にでも奪ってくれた方が、よっぽど楽なのに。あなたは残酷なくらい、わたしに優しいんですね。
「…殿方は、想っている女性を抱きたいと思う一方、想ってもいない女性を抱くこともできると聞きました…。それならなぜ、ユーリはわたしを抱かないんです?」
「エステルを想っているからだよ」
ひどいです。そんなことば、聞きたくなかったのに。
そんなこと言われるくらいなら、私の"想い"とあなたの"想い"はイコールで結ばれないのだと、はっきり言ってもらった方がましでした。
「…やっぱりユーリはいじわるです」
涙越しのゆがんだ世界に見えたのは、あなたの悲しそうな笑顔でした。
《Not Equal》
それでもやっぱり
あなたが好きなんです
ユーリはエステルを"仲間"として大切に想っています。
エステルもそんなユーリの気持ちを分かっています。
けどどうしても振り向いてほしくて頑張っちゃったみたいな←
でもやっぱり怖くて泣いちゃいました
ユーリは最初からエステルを抱く気はありませんでしたよ!
分かりにくくてスミマセン