text (ES21)
□HAPPY DAYS!!
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「ムサシくんがデビルバッツに戻ってきてくれて、ほんとによかった」
放課後、部室へむかう途中。背後からの突然の声に、ムサシは振りかえった。独り言ともとれる呼びかけは、我らが泥門デビルバッツのマネージャー、姉崎まもりのもの。
彼女は、すでにジャージに着替え、両手にドリンクの入ったカゴを持っている。
「ヒル魔くん、最近すごく楽しそうだもん。笑顔がいきいきしてる。ムサシくんが戻ってきて、ほんとにうれしいのよ」
まもりは、ムサシのとなりに並ぶと、入学当初からくらべてだいぶ伸びた髪を揺らして笑いかけてくる。
「…そうか?」
「そうよ」
そう言ってまた、クスクスと花がほころぶように笑う。
ムサシはチラリとまもりに視線を移し、またすぐに戻すと、話題の中心である旧友を思い浮かべた。
確かに、最近のヤツは前にもましてアメフトにのめり込んでいる気がする。
それは、先日敗けた試合の悔しさからか。はたまた、キックというカードが彼のトリックプレーに新たに加わったためか。
ムサシは再びまもりに視線をむける。彼女の顔には、変わらず満面の笑顔。
「…そう言う姉崎も、ずいぶんうれしそうだな」
「え?あ、そりゃ、わたしもムサシくんが戻って来てくれて…」
「そうじゃなくて」
ムサシは首を振り、やんわりと否定した。キョトンとするまもりの碧眼をのぞき込む。
「ヒル魔が、うれしそうで、だ」
なんでもないように。けど一言ひとこと丁寧に。ムサシは言って、まもりの手から半ば強引にドリンクのカゴをもぎ取った。
「先行ってるぞ」
そう言うと彼女に背をむけ部室を目指す。ムサシの言葉に身体と思考が停止したまもりからの返事はない。
ムサシは堪えきれず、口元をニヤリと緩めた。
あのヒル魔が。あの姉崎が。
人生わからないものだな、と、年寄り臭いことを思って、また笑う。
これからの日々、アメフト、泥門デビルバッツ。なんだか無性に、それらがキラキラ輝いてみえた。
《HAPPY DAYS!!》
輝く明日へ
明るい未来へ
西部戦で、『ヒル魔くん楽しそう…』と言うまも姉がとってもうれしそうに見えたのが事の発端
無自覚って、おそろしかわいい…
まも姉にとって、ムサシはお兄さんみたいなポジション、というのが、わたしの中の勝手なイメージ
この後まも姉は、ムサシとヒル魔をみるたび顔を赤くするのでしょう
ワケが分からず首を傾げるヒル魔と、そんな二人をみて笑いを堪えるムサシ
そんな三人が見られるはず(*^_^*)
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