ORIMANI*n
□短文ログ
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旧サイトより。
埋葬虫。
***
【橙オレンジ。】
まだ夕方には少し早い時間。
橙色に染まった暗い部屋の中、畳の隅に置かれた座布団に白い丸太が転がっていた。
ころころ、ころころ。
それは座布団から転がり落ちるとそのままころころと室内を移動して、文机に頭をぶつけて停止した。
「…ぃたっ、」
丸太がちいさく叫ぶ。
白い丸太。
それは手足の無い少女だった。
手のある部分に、白い包帯をひらひらさせて。
脚のある部分に、白い包帯をひらひらさせて。
奇異な程長い睫毛に覆われた金眼に薄く涙を溜めて、少女は身を丸めた。
「…いたぁい…」
文机にぶつけた頭を左右に振って、ころころと元の座布団に戻る。
手も脚もない丸太の様な体では、一人で何か暇潰しをする事は出来なかった。
要するに、彼女は現在暇を持て余して寝転がっているのである。
「暇、だよう……。お兄ちゃんは居ないし、赤虎はお仕事の帳簿付け。……食堂に行くにも時間はまだだし、医務室へ行ったら物凄く沁みる薬で治療だし……。あー、暇、暇、暇、ひーまー……」
ころころころころ。
ころころころころ。
「……流金ちゃん、も忙しいよねぇ」
ころころころころ。
「あー、せめて任務でもあれば楽しいのにな。…任務なら、手足が無い事を苦痛に感じなくて済むし。」
ああ、暇。
少女はそう呟いて丸くなる。
もう、寝ること位しかする事が無い。
「……暇、だなぁ……。」
せめてこんな時に誰かが傍に居てくれたら良いのにな。
ぽつん、と丸太は言って。
座布団に埋もれるようにして目を閉じた。
橙色に白い頬を染めながら、白い丸太は何を夢見るのだろうか。
(丸太の日常)
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