ORIMANI*n

□短文ログ
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賤鳥任務話。
微裏。



※作中の”辻吾(じゅうご)”はぽんちゃんの本名です。潜入任務時ではぽんちゃんはわざと自分の本名を使ってます。




***



「にゃあ、」

わたくしはねこです。
わたくしはだんなさまのかわいいねこでございます。


【アラビゥ、ラミドゥ?】


「にゃあ、にゃあ」
「お前はほんに、かぁいらしいなあ…辻吾や」
「にゃあ、………なぁぅ、」

流し目をくれながら旦那様の膝に前脚を載せます。そのまま旦那様の上物の着物を握り込んでみると、旦那様は悪趣味な指輪を沢山嵌めた、爪にカスの詰まった汚い手でわたくしの頭を撫でました。わたくしはその手を払いたいのを堪えて旦那様の手に頬ずりをします。わたくしは狗の様にだんなさまに忠実な猫でございます。ですから汚らしいぶっくりと浮腫んだ手がわたくしの首筋を撫で回し、裸の背に這っても抵抗なぞいたしません。されるがままになりながらにゃあにゃあと可愛らしく啼くのです。菊門へと太い指が押し付けられても甘く甘く啼き、そこでようやく形だけ嫌々と抵抗してみせます。触られるのが嫌、ではなく、恥ずかしいから止めて、と、そう訴えるかの様に嫌々と首を振り、身体を捩るのは存外むつかしい芸当です。かるぅく旦那様の腕へ爪を立ててみるのも、意外と大変です。抵抗を見せながら相手が痒みを感じる程度に爪を突き立てるのは指先の微妙な力加減が必要なのです。

「ふ、ふ。抵抗もかぁいらしいものよ。…ねこは気に入らねば爪を立てて我が儘を言うのが愛らしい」
「なぁぅ、にゃああ、」

正常とは云えないまでに、短い左腕よりは些かマシな右腕で己の身体を支え、旦那様の膝に乗り上がります。胸がむかつく様な気持の悪い香と老臭に耐えながら、頬の弛んだ皮膚に己のそれを擦り寄せると、旦那様は嬉しそうに笑います。そこで旦那さまが好きと仰る笑みを浮かべます。可愛らしく笑むのではなく、ツンと澄ました冷たい蔑む様な笑みを浮かべるのです。すると旦那様はこいつめ、と唸りながらわたくしを褥へ放り投げます。わたくしはくすくすと少しばかり耳障りに笑いながら、のしかかる旦那様の首へ腕を回します。わたくしの首筋のにおいを必死になって旦那様は嗅ぎます。わたくしはくすぐったいと云う様に身をよじりながら、だんなさまの耳朶に舌を這わせ、ごく軽く咬み付きます。旦那様の呼吸が徐々に荒くなってまいります。わたくしは恥じらう様な表情を見せながら自分で脱げ掛けて緩んだ帯をほどきます。そうすると現れるのは日をあまり浴びる事の無い、染みひとつない白い肌です。自分では気味が悪いと感じるこの青白い肌は、金満家達は大層好むようです。白磁の如く滑らかで、白く透き通り、手に吸い付く様な肌触りだと口々に褒めそやします。わたくしは里のものでもっと気味が悪い程肌目の整ったものを沢山知っておりますので褒められても毛ほども気持ちは動きません。然様ですかと宣う代わりににゃあと一声上げて旦那様の腰に脚を絡ませます。気心の知れた里の者ならばやるならさっさとしろと急かしてしまいたいところですが、旦那様相手にそうは行きません。わたくしは精々媚を売って、旦那様に身体中を愛して貰わねばならないのでございます。

「辻吾や…」
「なぅ?」
「儂のねこ、可愛いねこや…」
「にゃあ、にゃあ」

わたくしは旦那様のものでございます。そう言う様に愛らしく啼いてみせます。そして、夢中になってわたくしの肌に吸い付く旦那様の肩越しに天井を見上げます。天井の板が一枚、僅かに動き、そこから見知った浅葱色の眸が見えました。わたくしは板を外す音が旦那様に聞こえない様に可愛らしく耳元でにゃあにゃあと啼いては甘えてみせます。すると天井の浅葱色はにんまりと三日月の形に目と口を歪めます。淫売め、と目でこちらを詰ってきますが、わたくしの知った事ではありません。浅葱色の目をした男の仕事と、わたくしのする仕事は違うのです。わたくしは尚も甘ったるく啼きながら、旦那様に身体中を愛されます。肌を仄赤く染め上げながら、ゆるゆると視線を旦那さまから外して震えてみます。旦那様は上機嫌そうに愛い奴よ、とわたくしの脚を開きに掛かります。散々自分でならした菊門は女のほとの様に潤み切って、旦那様を待ちきれないと言わんばかりにはくはくと動きます。旦那様はそれを見て着物の袷を開くと自分の赤黒い一物を取り出します。屹立したそれはいつ見ても呆れるほど立派です。年相応に落ち着いたらどうなのかとわたくしはいつも思います。

「…ッ、ん、ァああ…!!」

菊門に宛がわれた切っ先がぬぷぬぷと押し入ってきます。解してもこれです。毎度肉がめりめりと裂ける様な痛みが走ります。この稼業を始めてから、道具以外でここまで広げられた事はそうありません。流石に苦しく、ふうふうと息を吐きながら若干演技では無く旦那様の胸元にしがみ付いて痛みと拡張に耐えます。半ば演技で無い事を見抜かれているのでしょう、旦那様は酷く嬉しそうにしながら、まだ馴れ切らぬ内からがつがつと腰を揺さぶります。わたくしは揺さぶられる頃には痛みも拡張も耐えるだけの気力が戻り、旦那様を喜ばせるべく腰を揺らめかし、胎内をきうきうと締め付けます。天井裏の浅葱色はそんなわたくしを蔑んだ目で見詰めながら自分の武器を構えています。時機を見計らっているのでしょう。せめてわたくしが旦那様の上に跨っていればさっさと屠る事が出来たと云うのに、運の悪い事に今日は私が下におります。今ひと思いに旦那様を殺しては、重い肉塊に押し潰された精液まみれのわたくしを引き摺り出す事は面倒でしょう。しかし、浅葱色はしきりに時間を気にしております。さっさと帰りたいのがありありと判ります。わたくしも帰りたいのは一緒だと内心苛々するのを抑えつけ、精一杯の愛らしさで旦那様を悦ばせます。旦那様の呼気がいよいよ怪しい。そろそろ旦那様が気をやりそうです。わたくしはこれが終わったらもうこの屋敷とはおさらばだと思いながら胎内の長大な一物を必死で締め付けます。

「ふ…ッ、辻、ご…ッ!」
「ヒぁ…っ」

びゅうびゅうと胎内に大量の精液が垂れ流されます。わたくしはぞくぞくと身体を震わせながらその怖気の走る感覚に耐えます。そうして旦那様の首根っこにしがみ付き、旦那様を固定します。下敷きになると面倒ですが、もうわたくしは帰りたくて仕方ありません。浅葱色の男に口の動きだけではやく、とそれだけを伝えます。

「、!」

しゅん、
風を切る音がして、目の前がぱっと赤く染まります。旦那様の首が切断され、私の真横に落ちました。切断面からぶしゅううと溢れ出る生温かく真っ赤な血液を顔面に浴びながら、なおも胎内に出される精液に顔を顰めます。天井裏からひらりと室内に着地した浅葱色の男は笑います。

「…辻、吾?」
「黙れ、直ぐ忘れとけ。……仕事用の名前だよ。」
「へえ、」
「それよりこの死体退かしてくれよ。自分じゃ抜け出せねえ。本当重くて…って云うかデカすぎてこの体勢じゃ自分じゃ抜けねえ。」
「仕方ないですね。」
「ふ…ッ」

男が首無し死体になった旦那様の両脇に手を差し入れ、わたくしの上から退かします。ぬぽ、といやらしい音がしてわたくしの菊門から長大な一物が抜けました。途端に旦那様の子種がとろとろと溢れます。もうそんなものを恥ずかしいと思う事は疾うに忘れてしまったわたくしです。男がどれだけ出されたのかとくすくす笑ってもわたくしは顔を羞恥に歪める事はありません。男が見ているのも構わずに子種を掻き出し、身を清めて帰り仕度を始めます。短い左腕では帯を結べず、男にそこだけは手伝って貰います。男は器用にも帯をめおと蝶に結びます。可愛らしい番の蝶が背中に止まっているのを確認していると、屋敷の何処からか悲鳴が上がりました。大方、旦那様の首から溢れた血を纏った部屋の障子紙を女中が見つけたのでしょう。浅葱色の男は何も言わずににんまりと笑うと、わたくしに手を差し伸べました。

「さァ、”辻吾”」
「その名で呼ぶな。」
「ふふ…ほら、帰りますよ」
「………里に着くまでにその名前は忘れとけよ。」
「それは…どうでしょうね?」
「………」

わたくしは顔を顰めながら男の手を掴みます。男は猫の仔でも持ち上げる様にわたくしを腕に抱えます。わたくしは男の首に腕を回し、精々振り落とされない様に確りと抱き付きます。男からは血と、花の様な瑞々しい上物の香の匂いがします。旦那様には無かった若い男の香りです。わたくしは鼻腔に残る旦那様の残り香を男の匂いで塗り潰します。男は仔猫みたいだとわたくしの様子を見て笑います。わたくしは男の首筋に顔を埋め、何も答えません。女中の叫びを聞き付けた者たちが部屋に押し入って来る前に、男はわたくしを抱えたまま屋敷から飛び出しました。



その屋敷には、もう辻吾と言われ寵愛された畸形のねこはおりません。
屋敷には血溜まりの褥で永遠に眠り続ける旦那様が悲鳴の子守唄で眠るばかりにございます。

・終・


***


思いの外長い話になってしまった…。
ぽんちゃんの本名を私は割と気に入ってる。


お仕事するぽんちゃんを書きたかったので書いてみた。これは楽な方のお仕事。
紳士を登場させたのは趣味。(……
多分ぽんちゃんが自分の脚で帰るの面倒臭くなっただけだと思うんだけど、そんな理由で紳士が来てくれる訳はないので多分この任務のお給金の3割くらい渡すって言ってたのかもしれない。

ぽんちゃん語りの地の文にするとぽんちゃんの一人称が「わたくし」、口調がいっそふざけてるレベルの敬語になるのも趣味です。耽美さを目指して失敗☆


任務の後しばらく紳士に本名で呼ばれておいやめろってなるぽんちゃんを想像すると楽しい。

ちなみに作中の前半でぽんちゃんがにゃあにゃあ言ってるのは旦那様のご趣味です。私のじゃないです。
旦那様良い趣味してらっしゃるww笑

タイトルは”愛してる、愛してる?”
深い意味はない。


このぽんちゃんの任務は時折書きたくなる。
そしてこの手の任務に出るぽんちゃんによそまにさんを絡ませたくなる。






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