[進撃]ゆめみち

□ありがとう、またね。
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遠くの方から人の騒ぎ声が聞こえる

多分「巨人が!」と言って走り回っているのだろう。
ボビンはちゃんと逃げられたかな…
バネッサなんか自分の服大好きだからもたもたしてるんだろうな。

「ユリ、先に行ってていいぞ。ハンジと合流するんだ。」

「はっ!」

リヴァイにそう言われ、私は遠慮なく先に行く。

エレンはまだなの?
もしかして3次作戦の準備?
なんかびっくりだな…。
3次作戦とはアニを罠にかけることだ
アニを罠にかけて確保になるけど、上手くいくのか…。

私は最速でハンジさんの元に向かった



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「ハンジさん!」

「ユリ!ユリが来たってことは3次まであるんだね…あるんだね!」

「はっはい!」

「やったぁ…出番だ…やった。」

「よ、喜んで頂けて…幸いです。」

(ハンジさんのこんな姿初めて見た。)

次第にアニの足音が大きく聞こえて来て、ハンジさんのグループが一斉に準備に入る。

「ふ、ふふふ…来る…来るぅ…。」

私ともう一人の兵士は、嬉しさで震えるハンジさんを、まるで見たこともない生き物のような目でみていた。
いや、見ざる負えなかった。

「分隊長、目が…泳ぎすぎです。」


そしてジャンとアルミンのよって罠におびき寄せられる巨人化したアニがこちらを向いた。

やっぱり迫力があって怖い。

一瞬だけだけどそう思った。

私達は一気に仕掛けを放ち、女型の身体中に刃が突き刺さる。

「痛そう。」

ぼーっとしながらつぶやいた私に兵士は言う。

「俺たちの仲間はもっと酷い思いをして死んださ。」

近くにいた兵士が私に呟くと一瞬ペトラさんや怪我をしたリヴァイがフラッシュバックした。

「はぁ…。」

私はその場で尻もちをついて座と近くにいたハンジさんが話し始めるけど、声が小さく聞こえる気がした。

「ようし!3次作戦まで出番はないと思ってたけどとんでもない、流石はエルヴィン団長ってとこか…さてと。」



「なんでだろ。」



その言葉には特に限定してなくて、なんだろ…なんだか色んなことに対してそう思う。

落ち込むと思わず声に出してしまう癖を治さなきゃな…。

驚いて立ち上がると同時に耳が痛くなるくらいの何か爆音が響いた。

罠が壊された。

「流石に罠の量が足りなかったか!」

それが分かったのは女型が見えた瞬間だ。

私はワイヤを発射し、うなじに目掛けて飛びかかった。

「アニだめ!」

そう叫んだ私に向かって女型はこっちを見て手を伸ばす。

突っ込んだらだめだ

私はそれを避けて今度は腕にワイヤをひっかっけ、背中に向かった。


キィィィン


「痛!」

耳が痛くなるような音、また硬化された。そのまま女型は私を振り返ることもなく、まるで眼中にないとでもいうように逃げてしまった。

私はそのまま地面に着地し、

(追いかけなきゃ!)

そう思った矢先、私の目に飛び込んできたのは路地から飛び出してきたあのバネッサだった。

「あっ!」

ここはバネッサの家の近くだ。
でもとっくの昔に避難命令が出ているはず…。

ほおっておくことが出来ず、走った。

「バネッサ!なんであんたがここにいるの!避難命令が来なかったの?!」

「うるさいわね!来たわよ、酷い身なりね…あなたのファンが泣くわ。」

(あんたその性格にファンがどれだけ泣いたでしょうね。)

「なんでこんなところにいるの!?」

「…宝物を忘れたの。」

「今はそれどころじゃない!はやく逃げなくちゃ!」

「うるさいわね!早く家に帰らせて!大事なものなの!」

「大事なものってなによ!」

「…ブレスレットよ。」

彼女の言うブレスレットというのは、彼女の祖母から譲り受けたものだ。
あの人はお婆さん世代のファッションリーダーと有名だからよく知っている。

どうすればいいの…。

アニの元にいかなきゃ
でもバネッサが…。
バネッサをほおっておくことは簡単で、アニの元に行かなきゃいけないことくらい知っている。

でもここでバネッサを見捨てたら私は一生後悔する…。

でも逆にアニを見捨てたら私は最低の友達だ。

「なんでこんなことするの…。」

私はどうすることも出来ずに立ち尽くした。


「「…。」」


沈黙が続く
私は必死に頭を回して考える。

「アニの家には何がある?」

「…鏡の間。」

「喧嘩売ってんの?」

「…地下に図書室があるわ。」

「…地下?」

「えぇ。」

私はバネッサを担いで立体機動で彼女の家を目指した。
バネッサの家は女型がさっき逃げていった方向にある。
もしかしたら危ないかもしれない。

「ブレスレットをすぐに見つけて地下室にいるのよ。ドアを閉めてじっとしてなさいね。万が一のことがあっても、私が絶対に迎えに行くから!!」

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バネッサを送り、外に出ると

ピカッ

遠くで爆音と共に雷が落ちた
エレンが巨人化したのだ。
私はバネッサの家の屋根に上がり、雷が落ちた方向を見る。
そこには巨人化し、アニの方向に向かって走っていくエレンの姿。

「ぐおおおおぉぉぉぉぉ!!」

エレンの雄叫びが聞こえる
いつになくグロテスクな声だ

あぁ、アニ…

色々なことを考えていると頭が痛くなる…。

もうハッピーエンドにはなれないけど…せめてアニには無事でいてほしい。
最初は人が巨人になるなんて受け入れられなかったけど、エレンもアニもなりたくてなったんじゃない。
1000人の人達がアニを間違っていると批判しても、アニからしたら正義なのかもしれない。
だから正義か悪かなんて誰にも決められないのだ。

だから私はアニがそういう意味で間違っているなんて言えない。




でも…。




いくらなんでも私に黙っているっていうのは違うんじゃないか?

私は恋の話をしたり恥ずかしかった話をしたり、兎に角なんでも話した。

別に見返りなんか求めてないんだけどさ?
友達なんだからさ

「私巨人かもしんない。』

とか言ってくれてもよかったんじゃない?



段々刃を持っている手が汗ばんできた。


(アニ。)


私は立体機動で巨人が戦う方向に向かう。
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