メッシスで行こう!

□眼鏡
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【アルティの日記】
最初は遺跡に近づくなって言ってたんだ。それが今度は来いって…でも話をするからと言って呼んでおいて今は話すことはない、だって。パライエッタが怒るのも無理はない。あのアーシュラって子、何を考えてるのかサッパリわからないよ。
「…ん」
微かに声が聞こえて、気づいた時には遅かった。
「あ。ご、ごめん」
ここはメッシスのブリッジ。当たり前だけどシムーンがある場所じゃないし、だからここから出撃することもないはず…だよね?
「なんで謝るのよ」
「アルティ。用があって来たんじゃないの?」
マミーナとアーエルがキスしてて…シムーンに乗らないのにキスしてるってことは、そういう事だよね?
「いや、別にブリッジに用があるわけじゃなくて…」
「ああ、カイムを探してるんだ?」
「…うん」
そう、姉さんがどこにいるのかわからないから適当にあちこち探し回ってただけで。
「あなたも懲りないわね」
「そ、そういう二人は何なのさ?こんなところで…」
責めるつもりはないけど、心臓に悪いよ。
「別にどこでもいいでしょ。ちょうど誰もいなかったから」
「今からシムーンに乗るわけでもないのにマミーナがしたいって言うからさ」
つまりアーエルはよくわかってないのかな?キスの意味が…
同じとは言わないけど、あれは私が姉さんとするようなキスだ。
「誰とでもするわけじゃないよね?」
「当たり前よ。失礼ね」
「マミーナはだいたいユンだけだよね」
だからそういう意味じゃないんだけどな…やっぱりアーエルはわかってないっぽい。
「マミーナは…それでいいの?」
「何か問題ある?今すぐ特別に意識してほしいわけじゃないし、私は目的を達成してるんだからいいのよ」
マミーナはアーエルとキスしたいだけで恋人にならなくてもいいってことなのかな。よくわからないけど…
「ん?…何の話をしてるの?」
「い、いや。別に…」
二人とも平然としてて、なんだか私だけが恥ずかしくなってきたよ…
「ね。今度はアーエルからしてよ」
「人いるけど…」
「いいじゃない。どうせアルティにはさっきも見られたんだし」
「それもそうだね」
わざわざ私の前でするの!?…いや、私一人くらい居ても居なくても構わないってことか。
「私はもう行くよ…」
姉さんを探してるんだから、二人のキスをいつまでも見てたってしょうがない。
「…やっぱり恥ずかしいよ」
「だからいいのよ。ほら、こっち向いて。アーエル…」
…うらやましい。私だってその気になれば姉さんと…
「アルティ?」
「あ。リモネ…な、なに?」
姉さんとのキスを妄想してる時に…私、変な顔してなかったかな?
「ブリッジにいたの?」
「いたっていうか、ちょっと寄っただけ…リモネは?」
「ドミヌーラに呼ばれて…でも、やっぱりいいって」
それって…まさかドミヌーラも、マミーナとアーエルがキスしてるの見て入るのをやめた?
そもそもどうしてブリッジにリモネを呼んだのかって考えると、まさかドミヌーラもリモネとそういう…どうなってるの、この艦。
「あー!」
「わぁ!?…って、フロエ?」
びっくりした…てっきりマミーナとアーエルがキスしてるのを見てフロエが叫んだのかと…でもフロエはブリッジをのぞき込んでるわけじゃないみたい。
「なんか変な組み合わせ!」
リモネと私のこと?
「変なの?」
「知らないよ…」
「アルティとリモネが二人でいるなんて珍しくない?」
「そうかな?」
「別に二人でいたわけじゃなくて、偶然ここで会っただけだよ」
「うん」
「なーんだ。まあどっちでもいいけど」
どうでもいいことで急に叫ばないでよ…本当、フロエは無駄に元気だよね。
「フロエもドミヌーラに呼ばれたの?」
「そうだよ。リモネもなの?」
「うん」
リモネだけじゃなくフロエにも声をかけてたんだ…じゃあ別に変な目的で呼んだわけじゃないのかも?
「入らないの?」
「い、いや。でもドミヌーラは来てないんでしょ?」
「そうなの?」
「私はさっき見てきたけどドミヌーラはいなかったよ」
マミーナとアーエルはキスしてるのを見られても気にしないんだろうけど、この二人が加わると…特にフロエが大騒ぎしてあっという間に艦内に知れ渡っちゃうよ。それはちょっとマズい気もするんだよね…
「ふーん。まあいいけど…作戦や敵の分析なんてそんなに大事なことなのかな?」
ん?作戦?…もしかして、ドミヌーラがフロエたちを呼んだのはそのため?
「そんなの当たり前だろ。正体不明の敵と、最初から正体がわかってる敵。どっちと戦うのが楽なのか考えてみなよ」
「姉さん!」
探さなくても姉さんのほうから来るなんて…
「もしかして、姉さんもドミヌーラに呼ばれた?」
「はあ?別に呼ばれてないよ。命令でもないのにドミヌーラの気まぐれなんかに僕が付き合うと思う?」
姉さんはドミヌーラが嫌いだから…ドミヌーラ個人の頼みなら聞くわけないか。
「正体不明の敵って、あの無人機?」
「もっと変なやつがいるだろ。アーシュラとか、あの偽アムリアとか」
アーシュラのことも姉さんは気に入らない…いや、私も変だなとは思うけど。マミーナも疑ってたっけ。
「でもアーシュラには私たち助けてもらったよね?」
アムリアもどきの赤いシムーンみたいな機体に襲われたとき、アーシュラのおかげで助かったのは確かだ。アーシュラの目的はわからないから、私たちを助けるつもりだったとは限らないけど…
「一度助けられたからってあいつが味方だと決めつけることはできないよ。本当に味方だっていうなら意味不明の行動で僕らを振り回したりしないで、まともに話をするべきだろ」
「それは…そうかもしれないけど」
フロエはアーシュラのことは味方だって思ってるのかな?
「きっと、私たちに何かをさせたいんじゃないですか?」
「あれっ、ロードレアモンまで来たの?」
なんだか、みんな集まってきちゃった…マミーナとアーエルはまだ中でいちゃついてるのかな?
「ドミヌーラに呼ばれた?」
「え?…いえ、誰にも呼ばれてないですけど…それよりアーシュラは」
「何かって何だよ。はっきり言いなよ」
あくまでアーシュラを味方とは認めない姉さんがロードレアモンを問い詰める。
「何か…私たちに力を貸して欲しいことがある…とか?」
「曖昧でよくわからないな。助けを求めているような態度には見えなかったけど?」
「私もそう思う…力っていうけど、アーシュラのシムーンのほうが私たちより圧倒的に強かったよね…」
私たちはシムーン6機でアムリアもどきの1機にまるで歯が立たなかったけど、アーシュラは一人で互角に戦ってたし。
「そ、それは…力といっても、単純に戦闘だけじゃなくて、何かアーシュラだけではできないことがあるんじゃないですか?」
「フン…まるで何も喋らないアーシュラの代わりにロードレアモンが必死で言い訳してるみたいで滑稽だね」
確かに…どうしてそこまでアーシュラを庇うんだろう?
「ロードレアモンは人がいいなあ…」
「あっ、アーエル!」
マミーナとアーエルも出てきた。
「…もういいの?」
「あなたたちがうるさいのよ。せっかく静かだったのに…ムードも何もありゃしない」
「ムード?」
「な、なんでもないよ。それよりアーシュラの話でしょ?あたしも気になってたんだ」
アーエルはやっぱりちょっと恥ずかしいのかな。
「アーシュラより怪しいのはあれでしょ?アムリア似だかの女!」
とうとうモリナスまで来た。
「あいつか…何者なんだろ?」
「どうでもいいけど、いつまでこんなとこに大勢たまって立ち話してるのよ。入ればいいじゃない」
マミーナの提案で、ひとまず全員ブリッジに移動することに。
「アムリアって言うけどさ、あんな顔じゃなかったと思わない?」
「確かに…似てはいるけど別人のようにも感じますね」
「うん…雰囲気っていうか、何かが違うんだよね」
「あれでしょ。色が違うんだよ」
「ああ!それだ!」
フロエの一言に、アムリアを知ってる姉さんと私とロードレアモンは納得。
「色って?」
「髪とか肌とか、とにかくいろいろ!最初は似てると思ったけどやっぱり違うよ」
「そんなに言うほどよく見えたの?」
「だって、私一人だったら見間違いで済まされても、みんな見たんだよ?あれがアムリアだって言うなら、アルティがメガネかけたらカイムになっちゃうじゃん!」
私自身は、そこまで姉さんと顔が似てるとは思わないけど…姉さんもそう思ってるよね。
「確かに…似ていてもカイムとアルティはちゃんと見分けがつきますし、あの人もよく見たらアムリアとは全然違うのかもしれませんね。同時に二人を見ていないから混同してしまうだけで…」
「たぶん、ネヴィリルは認めたくない気持ちがあるんじゃないかな?アムリアとは別人だって…だから実際のあいつの姿よりも記憶の中のアムリアがそこにいるみたいに錯覚してるんだよ」
「リモネはどう思う?」
黙ってみんなの議論を聞いていたリモネに、ロードレアモンが話を振る。
「…わかんない」
一言で片付いてしまった。まあ、根本的には私たちも同じなんだけどね。本人を捕まえでもしない限り、はっきりと真相を確かめることはできないんだから…
「やめやめ。わからないことを内輪でああだこうだ言っても始まらない。やっぱり本人に会って確かめるしかないよ」
「私もそう思います…」
「アーエルにしては至極まともな意見ね」
「まあ、結局それだよね…」
「じゃあこれで解散ってことで。行きましょ、アーエル」
「え?あ、うん」
「行こ。ロードレアモン」
「はい」
マミーナとアーエル、リモネとロードレアモン…
「ちょっと。アーエルをどこへ連れてくの?」
「あなたがいないところへよ」
「何それ!?なんで?」
マミーナはまだアーエルといちゃつき足りないんだろうな…フロエがついて来るとさすがに困るのかも。
「…僕らも行こうか」
「デッキにする?訓練する?」
お風呂ごはんみたいなテンションでモリナスが…って、それじゃモリナスと姉さんが新婚夫婦みたいじゃないか!
「私も行くよ!」
「なんで?」
「な、なんでって…姉さんが訓練するなら一緒に…」
「訓練するとは言ってないよ。それにアルティのパルはフロエだろ」
「それを言うなら姉さんのパルはパライエッタで…」
「くだらない用事にパラ様を付き合わせるわけにはいかないよ。こういうのはモリナスでいいんだ」
「くだらないとは随分な言い草ね」
「私じゃダメなの…?」
そういえば最近、姉さんはモリナスと一緒にいることが増えたみたいだけど…
「だってアルティは機械ヲタクじゃないだろ」
姉さんは機械ヲタクが好きだったのか!?
「やっぱり私も行くよ!」
「うるさいなあ…来たければ勝手にどうぞ」
負けてられない!今からでも私も機械の知識を増やさなきゃ!
…いや、いきなり機械は難しいから。せめて…そう、姉さんの壊れたメガネを直せるくらいには。

(終)


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