メッシスで行こう!

□受難
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「ドミヌーラ。ドミヌーラってば」
まどろみかけたドミヌーラの名を呼ぶ声が、耳もとで聞こえている。振り向けばぼさぼさの金髪を結ったおだんご頭がこちらをのぞき込んでくることは想像に難くない。あるいは彼女も寝る前には髪をほどいているのかもしれないが。
「…明日にしてちょうだい、アーエル。私疲れているのよ」
起き上がる気にもなれないドミヌーラにとって、アーエルの髪型など確かめている余裕はなかったが、まだ背後で何かぶつぶつ言っているのがアーエルの声であることはわかる。仲間の十一名の声が判別できる程度には、ここで一緒に生活してきた。
このアーエルという娘と違ってドミヌーラは誰とでもすぐ打ち解けるような性格ではないし、人付き合いは苦手なほうだ。むしろ仲間の半数には嫌われているだろう。ドミヌーラは上司にあたる司兵院や中央大聖廟からの命令を伝えなければならない。そのために、年下とはいえ同じ巫女であるコール・テンペストの仲間にあれこれと指図するが、このコール・テンペストの面々は個性派ぞろいの寄せ集め部隊で、なかなか言うことを聞いてくれない者が多く、苦労が絶えない。
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