メッシスで行こう!

□餌付け
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「本当だってばぁ。アーエルがドミヌーラの──」
「Trick or treat?」
ぬいぐるみを(破壊して)不器用な手つきで縫い直した張本人の目の前に、それが現れる。我ながら不細工な仕事だ、と苦笑するしかない。
「ドミヌーラの、何?」
お菓子をもらいに来たリモネだが、フロエの言いかけた続きが気になる。
「部屋…に?」
さっきから話を聞かされていたパライエッタが、フロエを睨みつけてかぶりを振る。リモネには話すな、という意思表示だ。
「あー、そうそう私アーエルに用があるんだったぁ」
わざとらしく言って逃げ出すフロエ。リモネは首を傾げながら、パライエッタを見る。
「リモネは何をしてるのかな?」
素早く話題を変えるパライエッタ。リモネは思い出したようにぬいぐるみを掲げて、
「パライエッタはお菓子くれる?」
唐突なリモネの要求だが、動じないパライエッタ。
「お菓子…部屋にチョコレートがあったかな」
持ってきてやるつもりだったが、リモネがついて来るというので、共同部屋へ。
「リモネ。どうだった?」
部屋にいたロードレアモンが、リモネに“収穫”の首尾を尋ねてくる。
「まあまあ…かな」
リモネが持ち出した一番大きな(変な顔の)ぬいぐるみはロードレアモンのお気に入りだが、リモネも気に入ったので自由に借りていいことになっている。そういうところはやっぱりお嬢様だ。
「マミーナびっくりしてた」
また読書が好きで物知りでもあるロードレアモン。今回リモネに例の風習を教えたのも彼女だった。
「マミーナが? 私も行けばよかった〜(≧ω≦)」
リモネの報告を聞いて嬉しそうなロードレアモン。ちなみにマミーナとは幼なじみである。
「確か、この中に…
パライエッタが荷物を取り出そうとしたとき、妙な音が聞こえて、驚いたパライエッタは荷物を落としてしまう。
「まだネズミがいるのかしら?」
不安そうなロードレアモン。
「この服…パライエッタの?」
リモネは怪しい物音よりもパライエッタの持ち物に興味をひかれた。
「!…それは」
パライエッタが慌てて拾うと、リモネもその反応にびっくり。
「どうしたの?」
パライエッタが普段まず着ないような可愛らしい服。ぱっと見ただけでもそれがわかる。
リモネもロードレアモンも冷やかすような態度ではないが、二人とも明らかに「気になる」といった眼差しを向けてくる。
「私の…といえばそうだ、けど違う」
観念したようにパライエッタは話してくれた。
「ネヴィリルに…似合うかと思って」
その服は、二人がシヴュラになる前に買ったが、渡しそびれている間に時は流れ、シヴュラになって忙しい生活の中でついに日の目を見ることがなかったという。
「今ではサイズも合わなくなってしまった」
昔を懐かしむように語ると、パライエッタはそう言って笑った。ネヴィリルもすっかり美しく成長した。もうパライエッタの後ろに隠れていた少女ではない。
「着てみてもいい?」
リモネの申し出に、パライエッタは快く応じた。アルクス・プリーマから思わず持ってきてしまったのは、あるいはテンプスパティウムのいたずらか。
早速ロードレアモンがリモネの着替えを手伝ってやると…
「リモネにはちょっと大きすぎたかな」
やはりサイズが合わず残念そうなリモネだったが、パライエッタにチョコレートをもらうとすぐに機嫌を直した。
そこへアーエルが、慌てた様子で部屋に駆け込んでくる。
「…ぱ、パライエッタ」
息を切らせて座り込むアーエルに、三人の視線が集中する。
「参ったよ。フロエが、いたずらするぞーって追いかけてきてさあ」
フロエの狙いはお菓子ではなさそうだ。リモネたちは顔を見合わせてうなずく。
「やっとの思いで逃げ…て?」
パライエッタ。論外。
ロードレアモン。意外に立派なので無理。
リモネ。致命的に余る。
「…え?」
パライエッタたちはアーエルを捕獲した。目的は言うまでもない。ロードレアモンの瞳が一瞬、ギラリと光った。
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