不二家

□何度も尋ねた
1ページ/2ページ





「…………ぇ?」



きっと聞き間違い。



僕は無表情な彼女の目をじっと見上げた(彼女は立っていて僕は座っているからであって決して僕の背丈が彼女より低いわけじゃ、ない)

彼女はいつだって無表情で、あまり喋らないし、滅多に笑わない。
衝撃だったのは僕が隣りの席に座ってもニコりともしなかったこと。
大抵の人間はいつもほほ笑んでる僕を見ればつられて笑顔になるのに、彼女は違った。
嫌われてるのかな、なんて真剣に悩んだ。






だから今目の前で僕を……その…、好きだと言った彼女が、ちょっと不貞腐れたように唇を尖らせた彼女が、いつもなら陶器みたいに真っ白い彼女の頬がほんのりピンク色に染まっているのとか、兎も角彼女の全てが信じられなかった。


「……ごめんなさい」


キョトンとして何も反応しない僕(それは間抜けな表情だろうなぁ)を見て彼女は不意に顔をしかめた。
こんな表情も初めてだ。
目の端にちょっとの水分をためて。

僕は焦った。



よくわからないけど、このままじゃ彼女が離れてしまうことは明白だった。僕は慌てて立ち上がって、彼女の白くて細い手首を掴んだ。



もう一度彼女の「好き」が聞きたくて







ねぇ、本当に僕のことが好きなの?





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ