絡ませた指から熱が奪われる。冷たい指とは裏腹に熱を帯びた彼の頬にそっと指を添えた。柔らかい、子供特有の薄い皮膚とその弾力に、私は思わず笑みを浮かべた。熱で潤んだ彼の、漆黒の瞳に浮かぶ戸惑いに私は小さくため息をもらす。甘えて良いよと囁けば、指を掴む手の力が抜けた。恭弥くんの熱い頬に私の冷たい頬をくっつけると恭弥くんは抵抗はしなかったが驚いたらしい。ピクリと一瞬だけ体が跳ねた後は、大人しいものだった。なかなか熱が下がらない。意識が定かではない恭弥くんの額には氷嚢はない。痛くて嫌だと訴えてきたから、冷えピタを貼るだけにした。粥を持ってくれば、恭弥くんは何それと言った。恭弥くんはどうやら看病というものをされたことがないらしい。何時も熱が出たら何を食べさせてもらってるのかなぁと尋ねたら、何もと返されたときは驚いた。同時に、私がここにいる意味を悟った。彼は未だに下がらない熱と戦っている。それと同時に、寂しさと戦っているんだ。
私は重ねられた手の小ささを見て、涙が零れた。まだこんなに小さいのに、愛されないことの絶望を知っていた。そんな彼の、小さな何かになれることを祈って、私は恭弥くんの唇に自らの唇をくっつけた。いつか恭弥くんが思い出してくれたら嬉しい。私の手を、愛を。いつか誰かに愛されたという記憶を。



「早く、元気になってね」






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