向こう側



魔人の考えることなんか分からない。魔人どころか同じ人間の考えることだって分からないんだから。と言うか魔人と人間の線引きって何?チワワとシベリアンハスキーは同種で、シベリアンハスキーと狼が異種なのと同じように、よく分からない線引きがされているのかなぁと思う。自分でも分からないこの理論、とてもまとまらない考えをネウロに言えるはずもなくて何時でも私は歯がゆさでイライラする。要は、嫌なんだ。線引きされて線の向こう側にアイツ、こちら側に私、ってなるのが。でも結局、アイツは、ネウロは向こう側の奴だった。向こう側に帰ってしまった。ヤコとは沢山話した癖に、私には何もなしかとも思ったけれど、仕方ない。未練がましい私と違って彼は私の存在など本気でミジンコ以下だったのだから。


「アイツが帰ってきても大丈夫なように、私たちは進化しなくちゃ」


そう言ってヤコは旅に出た。彼はヤコのそういうところが好きだったんだろうなぁと思いながら私も日々恋に勉強に仕事に色々と励んでいる。私がしわくちゃのおばあちゃんになった頃に来るだろうか?それとも人類や地球が滅亡した後とか?もしかしたら今この瞬間……


「フム、ミジンコ以下の存在にもついに繁殖期はきたか」


バキッと目の前で粉々に砕けた携帯……よりも数年前に魔界へ帰ってしまったはずのネウロがまるで、散歩でも済ませたかのような精々とした表情で立っていた。髪が伸びたなと不思議そうな表情を浮かべたネウロに、あぁ本当に彼には一瞬だけ深呼吸をしに魔界へ戻っただけなんだなぁと私は脱力した。結局彼は何時だって向こう側にいるのだ。

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