D.Gray−man
□天使と人の恋歌
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夢を見た。
広く澄んだ湖と
白く長い髪を持つ“少女”
“少女”は白い服を着ていて
背中には大きな翼
頭の上には輪が浮いている。
“少女”がこっちを振り返ると
そっと微笑んだ。
『天使と人の恋歌』
第一章:始まりの歌
ザァァァ――――――。
外は久しぶりの大雨。
教室の前の方では教授が色々と話しているが、今年大学生となったラビは
話していることを右から左へ聞き流しながら窓の外を見ている。
「(はぁ、この雨の中、家に帰るの面倒さ・・・。ユウの家にでも泊まろっかな〜・・・。
あ・でも殺されかけるのもオチだし・・・・。)」
ラビはチラッと隣の席にいる神田を見る。
神田は予想通り昼寝をしており、机の上に出ているノートは真っ白だった。
「(あーぁ、来週テストがあるっつーのに、大丈夫なんか??)」
眠っている神田を起こすのはとても勇気のいることだから、ラビは起こさずに、
再び窓の外の灰色の空を見た。
「(そういや、今日見た夢の女の子。可愛かったさ〜。背中に翼あったし、あれは絶対に天使さ。
はぁ〜・・。オレもあんな可愛い子が彼女に欲しいさ〜・・。)」
そんなことを思いながらラビは、誰にも聞こえないように小さく呟いた。
「つまんねーさ。」
* * * *
キーンコーンカーンコーン・・・・・・・・・・・。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
生徒たちは鞄に教科書を入れたり、溜息をついたり、他の生徒と話をしたりする。
「おいユウ。起きろさ。授業終わったぞ。」
ラビは、逃げる準備をしてから、神田を起こす。
「あ゛?!」
ラビは、神田が起きたのを確認すると急いで教室から出て行った
「(ふ〜、もう少しあそこにいたら、切り刻まれるところだったさ・・・。)」
神田はいつも愛刀「六幻」を持ち歩いている。
(注:銃刀法違反です。法律で裁かれてしまいますので(たぶん)皆様絶対に持ち歩かないでください)ので、安眠を妨害されると寝惚けて度々抜刀をする。
そのことを知っているラビは、いつも直ぐに逃げられるように帰りの準備をしてから、神田を起こすのだ。
「あー、それにしても帰んの面倒さ!!」
ラビは傘を差し、大学を後にする。
(ちなみにラビの父親母親は他界しており、一人で暮らしている。)
「ん〜、今日の弁当、何にするかな〜・・・。」
バス停の近くのスーパーに入り、ラビはお弁当売り場へ行く。
「(本当に、夢の中に出てきたあの子みたいに可愛い彼女がいてくれたらな〜・・・。)」
少しだけ溜息をつくと、ラビは適当に弁当を選び、レジの方へ向かった。
* * * *
ラビは、会計を済ませてバスに乗り、家のある森の入り口で降りる。
「うへー・・・土がべちゃべちゃさ・・・・。」
そう文句を言いつつもラビは森の中を進んでいく。
歩いてから数分が経ち、家まであと少しというところで、道端に何かが倒れているのを見つけた。
ラビが駆け寄ると、その倒れているものの背中からは美しい翼があり、
すぐそばには白い輪が落ちていた。
「ゲホッゲホッ!」
「だ・・・大丈夫さ!?」
ラビはそっと細い体を起してあげた。
「へ・・・平気です・・・。」
そう言うと意識を失った。
「・・・・・平気じゃないじゃん・・・・・。」
ラビは、その子を抱えながら、家へと歩いて行った。
* * * *