銀魂長編小説

□真選組一週間家政婦 1
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新八は、約束の時間より早く真選組に着いたが、既に山崎は門の前に出て、到着を待って居た。

「新八君、こんにちは。今日の依頼、旦那が許してくれないんじゃないかってハラハラしてたんだよ」
「山崎さん こんにちは。銀さん猛反発してましたけど、色々言ったら最後は諦めて項垂れてましたよ」
「さすが新八君。さ、上がって上がって」

山崎に促されるまま、新八は真選組の門をくぐった。
これから一週間、家政婦としてとは言え、あの真選組で働くのだ。
そう思うと、新八の体は緊張して力が入り、表情も固くなる。
そんな新八に気付いた山崎は、廊下を歩く足を止めると新八を振り返り、肩に手を添えると、優しい口調で言った。

「新八君、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。隊士の殆んどは、顔見知りみたいなもんでしょ?」
 
それから山崎はふわりと笑って見せた。
その笑顔と言葉、そして、なんともいえない柔らかな雰囲気に、新八はつられて微笑んだ。
そして、不思議と緊張が解れて行くのを感じ、山崎さんは凄いなあ…と、内心感心しているのだった。

「…そうですよね。ありがとうございます、山崎さん!」
「どういたしまして。あのね、新八君、今からそこの広間で一応顔見せみたいなものがあるから…」
「山崎のクセに新八君に触れるたァ、いい度胸じゃねぇですかィ」
「お、沖田隊長?!」

山崎が振り返ると、そこにはバズーカを抱えた沖田が、面白くなさそうな表情を浮かべて立っていた。
山崎の表情というと、一瞬で引き吊っていた。

「ねえ、新八君?」
 
キョトンとしている新八に、沖田は口角を上げて笑い掛けると、山崎にバズーカを預け、新八の手を引いて歩き出した。

「ちょ、沖田さん?!山崎さんは?」
「あいつァ放っといていいんでさァ。それより俺の部屋に行きやしょう」
「あのっ、山崎さんが今から広間で顔見せがあるって言ってましたけど…!」
「あーいけねえ。忘れてた」

思い出したように立ち止まる。
新八はホッと息をついたのだが、それも束の間、沖田は新八をいきなりお姫様抱っこすると、隣の襖を勢い良く開いた。
中では真選組の隊士達が、夕飯を前に談笑していた。
しかし、開け放たれた襖の方に一斉に視線を注いだ瞬間、可愛い新八の登場には心を踊らせたが、相手が沖田であるとわかると否応なしに沈黙した。
 
 
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