銀魂長編小説
□真選組一週間家政婦 1
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「沖田さん、降ろして下さい///」
もう、なにやってんですか!と、自分を簡単に抱え上げている沖田に必死に抵抗するが、
「まあまあ新八君。えーと、おいお前、マヨの化け物はどこでィ?」
軽く流されてしまっているのである。
沖田は入り口の近くに座って居た隊士に声を掛けた。
「ふ、副長ですか…?副長なら次期にお見えになると―」
ゴン
「いで。なにしやがんだ土方コノヤロー」
「そりゃこっちの台詞だ総悟。眼鏡が嫌がってんだろ」
丁度やって来た土方は、沖田に拳骨を喰らわした。
沖田の棒読みの抗議の声に最もな意見をつけて、新八を降ろしてやる。
沖田のこのお姫様抱っこは、土方や他の隊士への宣戦布告であった。
土方はそれに逸早く気付いて居たのである。
「すまなかったな」
「いえ、土方さん、ありがとうございます」
新八は、やっと沖田から解放されて、土方に嬉しそうに礼を言った。
その余りの可愛さに思わず目を背けた土方を、新八は頭の上にはてなマークを飛ばして見ていた。
そこに近藤が入って来た。
「おー新八君、よく来たなあ!」
「近藤さん!今日から御世話になります」
頭を下げる新八に、近藤は、そう固くなりなさんな。と楽しそうに言うと、新八の肩を抱き、広間の舞台の上まで歩いた。
土方、沖田もそれに続く。
舞台から真選組の隊士一同が見渡せた。
山崎の言った通り、半分以上が見知った顔で、新八は少々驚いた。
そして、開けっ放しだった襖から遠慮がちに山崎が入って来るのが見えて、新八はくすりと笑うのだった。
「山崎のやつ 後で本格的に消してやらァ」
沖田は相変わらずである。
舞台からなので訊こえる筈もないのだが、席についた山崎が身震いをしていた。
「全員揃った事だし、始めるか」
「?」
「「「いらっしゃい、新八君!」」」
土方の合図で、隊士達は背中に隠してあったクラッカーを、新八に向けて一斉に鳴らした。
新八は呆気にとられて、呆然としていたが、土方に背を押されて、やっと何が始まったのか理解したのだ。
歓迎会だ。
これは、自分が一週間真選組で家政婦を勤めることへの歓迎の意を込めたパーティーだったのだ。
新八は働かせてもらう身でありながら、こんなにも歓迎されていることに 感激して、涙目になりながら、隊士達に向かって、満面の笑みを捧げたのだった。
しかし新八は、気付いていなかった。
これが、自らを陥れる為に計画されたプログラムの序章であることに…
続く
後書き⇒
2010.5.12