落乱SS illust

□押し付け愛
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いつからだったかなんてそんなのいちいち覚えてないし第一それは分からなかったのだが、気が付けば私はずーっとその小さく動き回るかわいいのを眼で体で追っかけ回していた。

どこまで追いかけても捕まえるまで逃げるし、どれだけ抱きしめても頬擦りしてもいやそうで、手を放してやればすぐバイトだサッカーだ土井先生だでひょいーっとどっかへ行っちゃって。

まったくつまらない。
つまらないけど、私はそんなこんなで逃げ出した先で、なにやら笑ったり怒ったり困ったり…泣くとこは滅多に見ないけれど、とにかく元気いっぱいに過ごしているのをみてるのもそりゃあもう好きだった。

昨日窓からいつもの二人とサッカーをしている姿をみていたら、隣で本を読んでいた同じ組で同室の長次にもそもそと「きり丸をあまり困らせるな」と言われてしまった。

その晩そう言った長次のほとんどきこえない寝息を用心深く耳に入れながら"困らせる"について考えたけど、いくら考えても私がいつもきり丸をどう困らせてしまっているのか全然わからなかった。
うーんうーん。

だけど今日も私は朝起きて朝一の鍛練を済ませると一年は組へ走った。
は組へ着く途中の廊下でだらだらといつもより眠そうに歩いていたきり丸を視界に入れると同時に私は勢いよく真正面からきり丸を抱きしめて、そのまま五メートルほど廊下を滑って壁にぶっかって停まった。
当然きり丸には傷一つないのだけれど、もう日常になりかけているであろうその光景を何故かは組のクラスメート達はハラハラした様子で見守っていた。

腕の中にすっぽりと納まってうー…っと呻き声をあげて身動ぎをするきり丸がもうあんまりかわいいからさらに力を込めて抱きしめて、いつものように頬擦りをした。

「おはようきり丸!今日もかわいいなっ」

ふてくされたような顔でおはようございます七松先輩と帰って来てまたそれがかわいすぎるからおはようのちゅーをしようと思ったら残りの二人とは組達にうまーくとめられて、そうしてる間に騒ぎをききつけて駆けつけたらしい長次に首根っこを掴かまれて引きずられながらその場を後にするのだった。










2010.8.26

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