落乱SS illust

□は組の苦悩 その一
1ページ/1ページ



ガララッ

その時、綺麗な音を起てて教室の扉が敷居の上を滑った。

「きり丸、ちょっといいか?」

そこから顔を覗かせたのは、は組の担任である土井半助で、半助は、教室へ入るなり真っ直ぐにきり丸の方へ歩み寄りそう言った。

その言葉には組全員の視線は半助に集中する。
きり丸を好いている者たちの嫉妬の目線だ。

「はい!」

そんなことなど露知らずのきり丸は、さぞかし嬉しそうに返事をすると、半助と共に教室を後にしたのだった。

一斉には組の不服そうな溜め息が聴こえた。
「土井先生ったら、まただよ」

そう言ったのは金吾だった。
金吾のその言葉には組全員が頷く。
何がまたなのかと言うと、半助がきり丸を引き抜いて行く事だ。
この所、頻繁にきり丸を半助に連れて行かれる。
今日もこれで三度目なのだ。

「私のきりちゃんなのに」

乱太郎は机に肘をつきながら憂鬱そうに呟いた。





その頃二人は伝蔵と半助の部屋へと来ていた。

半助は部屋へ入るなり腰を降ろし胡座をかいた。
そして、きり丸に向かって両手を広げてみせる。

これが、は組を悩ませている行為の、始まりの合図だった。

「きり丸」

呼び掛けにきり丸は素直に従い、半助に正面から抱き着いた。
胡座をかいた脚の上に座り、半助の首に腕を回し、足を背に絡める。

半助はそれに満足そうに微笑み、きり丸を大きな身体で包み込んだ。

ぎゅぅううっ、っという擬音がこれほど似合う包容はないだろう。と思われるほど、それは愛しさに溢れる力強く相手を包み込むような包容であった。

一体何刻経っただろうか?
二人は随分と長い間、言葉を交わす訳でもなく只只抱き合っていたような気がした。

半助は名残惜しみながらもこの包容に終わりを告げた。

「きり丸、ありがとな」
「いえいえ!僕だってそろそろしたいなあって思ってましたから」

きり丸は胡座の上に乗ったまま、半助の顔を見上げ、にしし と可愛らしい八重歯をみせて笑った。

全くお前はどこまで可愛いいんだ!と半助は心の中で悲鳴をあげ、自惚れてしまいそうな程ニヤついていた。

半助は堪らずもう一度ぎゅっ、ときり丸を抱き締めた。

「充電終わり!」

半助のその声を合図に、きり丸は半助の膝から降りると、入り口へ走った。

「土井先生、教室で待ってます」

入り口で振り返ったきり丸は、綺麗な笑顔を浮かべていた。

半助はそれに観とれた。

襖の閉まる音がして、我に帰るともうそこにきり丸の姿はなかった。

「……今充電したばかりなのに、もう恋しくなるとは、私もどうかしてるな…」

この台詞をきり丸が訊いていたら、何と言っただろうか。
半助は、想像するだけで頬が弛むのを感じ、末期だと頭を痛めた。





「ったく。いつまで続くのかなあ…?」
「決まってるだろ、土井先生が飽きるまでだよ」
「きりちゃんも無意識で、その上"タダ"であんなことしてあげてるんだから、私頭が痛い」
「ぼくもー…」

は組を悩ませる半助の"きり丸を充電する"行為。

半助がきり丸を愛している以上、ずっと続きそうだ。














---

土井さんときり丸がバカップル過ぎる…!
そしてこの話の土井さんきり丸好き過ぎてかなりアホの子ですね(笑)

この後帰って来たきり丸が上機嫌なのには組は溜め息。
授業でも二人の世界を隠し切れない二人には組は溜め息(笑)←

は組が可哀想なので今度はは組×きり丸を書こうかな^^









2010.11.2

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ