落乱SS illust
□は組の苦悩 その一
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ガララッ
その時、綺麗な音を起てて教室の扉が敷居の上を滑った。
「きり丸、ちょっといいか?」
そこから顔を覗かせたのは、は組の担任である土井半助で、半助は、教室へ入るなり真っ直ぐにきり丸の方へ歩み寄りそう言った。
その言葉には組全員の視線は半助に集中する。
きり丸を好いている者たちの嫉妬の目線だ。
「はい!」
そんなことなど露知らずのきり丸は、さぞかし嬉しそうに返事をすると、半助と共に教室を後にしたのだった。
一斉には組の不服そうな溜め息が聴こえた。
「土井先生ったら、まただよ」
そう言ったのは金吾だった。
金吾のその言葉には組全員が頷く。
何がまたなのかと言うと、半助がきり丸を引き抜いて行く事だ。
この所、頻繁にきり丸を半助に連れて行かれる。
今日もこれで三度目なのだ。
「私のきりちゃんなのに」
乱太郎は机に肘をつきながら憂鬱そうに呟いた。
その頃二人は伝蔵と半助の部屋へと来ていた。
半助は部屋へ入るなり腰を降ろし胡座をかいた。
そして、きり丸に向かって両手を広げてみせる。
これが、は組を悩ませている行為の、始まりの合図だった。
「きり丸」
呼び掛けにきり丸は素直に従い、半助に正面から抱き着いた。
胡座をかいた脚の上に座り、半助の首に腕を回し、足を背に絡める。
半助はそれに満足そうに微笑み、きり丸を大きな身体で包み込んだ。
ぎゅぅううっ、っという擬音がこれほど似合う包容はないだろう。と思われるほど、それは愛しさに溢れる力強く相手を包み込むような包容であった。
一体何刻経っただろうか?
二人は随分と長い間、言葉を交わす訳でもなく只只抱き合っていたような気がした。
半助は名残惜しみながらもこの包容に終わりを告げた。
「きり丸、ありがとな」
「いえいえ!僕だってそろそろしたいなあって思ってましたから」
きり丸は胡座の上に乗ったまま、半助の顔を見上げ、にしし と可愛らしい八重歯をみせて笑った。
全くお前はどこまで可愛いいんだ!と半助は心の中で悲鳴をあげ、自惚れてしまいそうな程ニヤついていた。
半助は堪らずもう一度ぎゅっ、ときり丸を抱き締めた。
「充電終わり!」
半助のその声を合図に、きり丸は半助の膝から降りると、入り口へ走った。
「土井先生、教室で待ってます」
入り口で振り返ったきり丸は、綺麗な笑顔を浮かべていた。
半助はそれに観とれた。
襖の閉まる音がして、我に帰るともうそこにきり丸の姿はなかった。
「……今充電したばかりなのに、もう恋しくなるとは、私もどうかしてるな…」
この台詞をきり丸が訊いていたら、何と言っただろうか。
半助は、想像するだけで頬が弛むのを感じ、末期だと頭を痛めた。
「ったく。いつまで続くのかなあ…?」
「決まってるだろ、土井先生が飽きるまでだよ」
「きりちゃんも無意識で、その上"タダ"であんなことしてあげてるんだから、私頭が痛い」
「ぼくもー…」
は組を悩ませる半助の"きり丸を充電する"行為。
半助がきり丸を愛している以上、ずっと続きそうだ。
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土井さんときり丸がバカップル過ぎる…!
そしてこの話の土井さんきり丸好き過ぎてかなりアホの子ですね(笑)
この後帰って来たきり丸が上機嫌なのには組は溜め息。
授業でも二人の世界を隠し切れない二人には組は溜め息(笑)←
は組が可哀想なので今度はは組×きり丸を書こうかな^^
2010.11.2