落乱SS illust
□死有
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※死ネタ注意。
幼い小さな手が、力なく私の頬をなぞった。
すっかり熱を失ったそれ。
愛しそうに細められた切れ長の眼が、抉るように、私の脳裏に焼き付いた。
微笑んだ時に、ちらりと覗く八重歯が、私は好きだった。
もう随分、観ていないけれど、赤子の世話をしたり、洗濯をしたり、犬の散歩をしたり、野菜や着物を売ったりしてよく働く姿が、元気に走り回る姿が、私は好きだった。
生意気を言う口も、十歳にしては少しませ過ぎた物腰も、綺麗に切り揃えられた長く柔らかな藍色の髪も、総て、総て、愛しているのに、
どうして、
どうしてこの子でなくてはいけない?
何故こんなにも早く、この子の命を奪わなければならない?
頼むから、どうか、私から、この子を奪わないでくれ。
神が居るのなら、私はそれを憎み、呪う。
そうせずには居られない。
無力な私は、このまま何も出来ずに、最愛の人の、命が消え行くのをただ見守るしか出来ないのだと思うと、悔しくて、気が狂いそうだった。
「僕、最期の最期まで…せんせい、と一緒に居られるなんて、幸せ者だ なぁ…」
「土井せんせいに、出逢えてよかったです」
にっこりと余りに幸せそうに微笑むから、
「…きり、丸…っ」
私は布団に横になった、今にも折れてしまいそうな、以前よりも薄く骨張った身体を夢中で手繰り寄せた。
掻き抱く様に、きつく抱き絞めると、少し息を上げた風に弱々しく呼吸をして、
もうなにもかも嘘であって欲しかった。
きり丸、
いかないでくれ。
私を独りに、しないでくれ。
「土井、せんせ…?」
「なぁに…泣いてんすかぁ?」
「…馬鹿、笑っているんだ。私も、お前の様な出来の悪い生徒に出逢えて、今もこうして一緒に居られて、幸せ者だと、思って、な…、っ」
「はは 一緒っすねぇ」
「ああ、一緒だ。」
「きり丸、愛してる」
「僕も愛してます、半助さん」
叶わなかった願いを、私は一体、お前以外の誰と、哀しめばいいのだ、
2010.9.30
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土井さん
暗い話ばっかですみません。
次こそらぶらぶさせたい。
らぶらぶさせて
土井きりに勝てるCPってないと思う。