□予想外すぎて
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今回の罰ゲームは、ここ最近の中でも群を抜いて酷いものだった。
「団蔵に嘘告をする」なんて、よくもまあ思いついたものだ。しかも発案者の三郎次がこれをする羽目になったのだから情けない。

二年生の間でテストや実技で最下位だった人が罰ゲームをするのが流行っていた。もとは野村先生が「緊張感が出て良い」と授業で一回だけ、マラソン最下位の人が腕立てと腹筋をしたのがきっかけ。それを三郎次、左近、久作、そして巻き添えをくらった四郎兵衛が面白いからと個人的にやっていたのだ。
今までは罰ゲームと言っても、掃除当番を交換するとか昼ごはんを奢るとか、一般的と言えば一般的なものが多かった。
だが、今回は少し難しい筆記のテストだったので罰ゲームもちょっときつめにしようと言って…この結果。

僅か数点の差で三郎次が最下位。テスト用紙を持つ手がプルプル震えた。



「…だから『そんな罰ゲームはやめよう』って言ったじゃん…」



そう言うのは四郎兵衛。呆れたような哀れむような視線が突き刺さる。



「じゃあ今から別の罰ゲームに」
「それは許さない」
「もし僕たちだったらノリノリで『早く行って来い』とか言ってただろ?」



久作と左近の言葉に、う、と言葉が詰まる。図星。

こういうのは見るだけなら面白いのだ。別に好きでもない人に告白をする、あの瞬間、葛藤を見ているとニヤニヤが止まらない。しかも相手が団蔵ときた。「何言ってんですか!きもい!」と罵詈雑言を吐くのが目に見えている。団蔵の反応も面白いからニヤニヤは倍増。

…しかしそれはあくまで見るだけなら。まさか罰ゲームをする張本人になるとは思っていなかった。だって今回のテスト自信あったし!



「くそ!回答欄のズレが憎い!」
「それがなかったらぶっちぎりで一位だったのにね」



慰めてくれるのは四郎兵衛だけだ。左近と久作は「日ごろの行いが悪いからだ」と冷たいことを言っている。もうお前らなんか友達じゃないやい!



「さあ三郎次」



久作が机に突っ伏している三郎次の脇に腕を差し込み、強制的に立ち上がらせる。



「罰ゲームの時間だ」



そう言って笑う左近の顔はいつもと違って腹黒い。
意地悪だが根は優しい左近がこんな顔をするなんて。この表情から普段三郎次が提案する罰ゲームがどのようなものだったか、そしてそれを受けてしまった二人がどれほど恨みを募らせていたか御理解いただきたい。

引きずられるように校庭へ連れて行かれる。授業以外は団蔵は外で遊んでいることが多い。
気が重く沈んでいる三郎次に反し左近と久作は意気揚々。四郎兵衛だけが「やっぱり止めようよ」と言ってくれている。

これから団蔵に、好きでもないのに、むしろちょっと生意気で腹が立つことが多いのに、好きだと言わなければならないのか…。
どうして団蔵をチョイスしたかと言うと、は組の中でも目立つから。そして三郎次たちに生意気な態度をとることが多いから。
一年は組の中だときり丸も生意気だが、奴の場合「付き合いはしませんが、このことばらされたくなかったらお駄賃頂戴」などややこしいことになりかねない。その点、団蔵はそんなこともなく言葉は悪いが罰ゲームにちょうどいい。

酷い罰ゲームだという自覚がないわけではなかった。でも、でも、何回も言うが見るだけなら面白いと思ったんだ!



「あ、団蔵発見」



ひいいい。



「四郎兵衛、三郎次を校舎裏へ連れてってくれ。僕らは団蔵を連れてくから」
「逃がしちゃダメだぞ」



鬼!悪魔!叫んでやったが二人はランランとスキップをせんばかりに団蔵のもとへ。
四郎兵衛に「これに懲りたらあんまり酷い罰ゲーム提案しないでね」と釘を刺されつつ校舎裏へ連れて行かれた。逃がしてくれる気はないらしい。
提案しただけで採用されたことは滅多にないのに。ただ採用されたときに久作と左近がやるハメになっただけで。


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