□虎若と金吾が教える女装
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今日は実技の変装のテストだった。課題はもちろん、女装。
設定は「団子屋でお茶をしている女性」。縁側を椅子に見立て、団子の食べ方やお茶の飲み方で点数をつけられる。十点満点で、採点者はもちろん山田先生。
僕と虎若も先ほど終えてきた。合格ラインが八点で、僕も虎若もギリギリ合格。だって必死だったからな。何しろ不合格だった人は、後日もう一度女装をしてテストを受けなければならない。僕たちにとってそれは地獄でしかない。
部屋に戻ったと同時に服を脱いで化粧を落とす。そして虎若の部屋へ。虎若も同じことをしていた。



「うっわ、汚っ!少しは片づけろよ」
「そのうち片づける」



まるでジャングル。



「団蔵、合格すると思う?」
「うーん、やつも今回は必死だからなあ」



再テスト=再女装。女装大嫌いの団蔵も必死にならざるを得ない。
女装のところだけ点数が谷になっているからなあ。よくても四点なんてざらだ。半分を超えたためしはない。
見た目は完ぺきなのに仕草で引かれる。可哀相に。



「じゃあさ、団蔵が帰ってきたら冗談で『不合格おめでとー』って言わね?」
「ナイスアイディア。あ、僕クラッカー持ってる」



虎若が服を漁ってクラッカーを二つ取り出す。団蔵が「合格だよ、バカ!」と怒鳴る姿が簡単に想像できるもんだから、二人で笑った。
そして扉の両脇に構えて団蔵が現れるのを待つ。



「あ、来た」
「開けた瞬間、パーンだぞ」
「わーってる」



ダダダと足音がこちらに迫ってくる。合格して嬉しいんだな。一番に報告したいんだろう。
扉が、開く。



「不合格おめでとー!」



クラッカーの紐を引くと、パァンという音とともに紙吹雪が舞う。
ほら、頬を膨らませて「合格だよ」って…。



「……」
「……」



笑顔で…。



「……」
「……」
「……」



…あれ…?



「…そうだよ、不合格だよバカヤロー!」



拳を握りしめた団蔵が泣きながら叫ぶ。
不合格?ふ・ご・う・か・く?団蔵が、何ということだ、不合格だとは。
虎若と見つめあって、少しかたまる。団蔵の泣き声だけ響く。とりあえず部屋へ入れ、話を聞くことに。



「頑張ったのに七点だった!あと一点だったー!」
「それは…まあ…」
「再テストだって!いやだー!」



うわあああん。



「何で不合格なの?」
「分かんない!『自分で考えろ』だって!これ以上ないほど女の子っぽくしたのに!」



うわあああん。
涙がぽろぽろ。不覚にも可愛いと思ってしまう。あ、虎若も同じっぽい。つーかさりげなく股を押さえている時点で、起っているのが丸わかり。おい、さかるな。




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