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□ヒーロー
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僕は不運だと思う。
忍術学園に入る前はそんなこと思ったことなかった。更に言えば、保健委員会に入る前はそんなこと思ったことなかった。
保健委員会が不運委員会と呼ばれていると知ったのは、もう委員会が決まってから。だからみんな保健委員会に入りたがらないわけだ。誰か教えてくれよ。
「やーい！不運小僧！」
他のクラスの子にそう呼ばれるなんていつものこと。
この前は犬の糞を踏んだし、その前は鳥の糞を頭にもろに食らった。頭巾越しじゃなくて頭に直に。頭巾を巻いていることのほうが多いのに、どうしてこのタイミングを狙ったのか鳥に聞いてみたい。
不運の自覚はある。でもやっぱり言われるのは気分が良いものではない。
大体こういう意地悪を言う人って何人かでつるんでいる。僕も留三郎と一緒にいることが多いけれど、あいにく今は用具委員会でお呼ばれ中。だから多勢に無勢。
反応すると面白がってもっと言ってくるから、無視したり適当に相槌を打ったりするけれどそれも面白くないのか「今日はどんな不幸な目にあうのかなー？」なんて絡んでくる。どうすりゃいいんだ。
「もう！しつこいよ！」
振り払っても振り払っても追いかけて来てまで言うから、思わず言い返す。
「うわ！不運小僧が怒った！」
「不運たいさーん！こうしてやる！」
少しは効果あったかなと思ったけれどやっぱり反応が欲しかったようで、意地悪坊主二人組はにんまり。
砂を手で掴み清めの塩のごとくバッサバッサとかけてくる。
「やめてよ、目に入るだろ！」
腕で顔を覆っても全部は防ぎきれない。細かい砂が顔に当たってチクチク痛い。うわ、口にも入った。ペッペ。
何で僕がこんなめにあわないといけないんだ。
確かに僕自身は不運だよ。でもあくまで僕自身だけで他の人を巻き込んだりしてないのに。
「意地悪するほうがガキだ」とか「無視してれば飽きてそのうちしなくなる」とか、頭では分かっているけどやっぱり腹立つし辛い時もある。
じわ。目に涙が浮かぶのは砂が入ったからじゃない。
「あ！泣いた！泣き虫！」
「泣いてない！目に入ったんだ！だからやめろって言ったのに！」
意地悪坊主は涙を見逃すほど生易しくはない。
砂だと誤魔化すけど涙の出方が違うから嫌でも知られてしまう。
「泣き虫」の合唱は手拍子もついて大きくなる。もう砂かけには飽きたみたいだけど今度はこれか。あー嫌になる。
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