□友達終了のお知らせ
1ページ/6ページ




薄暗い牢屋の中へ押し込められたのは忍術学園の生徒十一人。制服の色から五年生だと分かる。
そこは十一人が入るには狭く、体を寄せ合うように檻の中へ。



「ざまぁねぇな」



顔を隠した忍びがくぐもった声で笑う。

今日は夜間演習の日で、実際の戦場へ足を運んでいた。
戦闘に参加し人を殺めた者もいる。そんな中、普段は絶対にするはずのない失敗をしんべえがしてしまった。

敵に捕まったのだ。

いくらおっとりしていてのんびり屋のしんべえでも絶対にそんなミスはしない。だから本当に間違って、いくつかのミスが重なって捕まってしまったのだと思う。
その情報が伝わる速度もまた早かった。戦場では捕虜に関わらずどんどん前へ進まなければならないのだがそこはは組、仲間を捨ててなんかおけない。
しんべえ解放の条件として出されたのが『一度全員捕まること』だった。その条件を飲んだ面々は自ら牢屋へ入ったのである。



「ごめんみんな。僕のせいで…」
「気にすんな。しんべえが無事でよかった」



泣きながら謝罪をするしんべえの頭を団蔵がポンポンと優しく撫でる。



「優しいねえ忍術学園生徒の諸君。戦場ではその優しさが命取りだよ」
「このまま殺されることだってあるからね」
「でも今回は君たちの勉強に付き合ってあげよう」



全員解放の条件交渉だよ。
複数いる覆面忍者が笑みを浮かべる。薄暗い牢屋だが、月明かりでその気味悪い笑みはハッキリと見えた。
庄左ヱ門が「条件は?」と落ちついた声で尋ねる。



「こちらが選んだ一人に全員の前で拷問を受けてもらおう」
「拷問っ…?」
「そうだ。一人は苦痛に耐えねばならない。他十人はその苦痛を目をそらさず見なければならない」



いい条件だろう?
シンとした牢屋に響く声はとても楽しそうだ。そりゃ十一人も捕虜がいるんだから笑いたくなるのも無理はない。

その他にも覆面忍者は細かな条件を付け加える。
人選に文句は言わない。拷問を途中で止めた場合全員解放はなし。拷問を受ける人間を途中で変えることはできない。など。

牢屋の目の前には両腕を拘束する縄が天井からぶら下がっている。きっと返事をすればここですぐにでも拷問が始まるのだろう。
拷問は勉強済みなは組だが、もちろん実際に経験した者はいない。ろ組は拷問のスペシャリストらしく、各部屋にはどう使うのかも分からない拷問道具がチラホラ。

庄左ヱ門がみんなを一度見つめる。しんべえは涙こそ止まったものの、罪悪感を感じているようで瞳は潤んだままだ。



「オーケー。その条件を飲もう」



交渉成立。覆面忍者の一人がヒュウと口笛を吹く。



「それじゃ早速拷問を受ける人だが、」



グ、と息が詰まる。全員の肩が強張ったのが空気で分かった。



「そこの腕まくりをしている君。来い」



指されたのはは組の特攻隊長団蔵。その人選にきり丸が吠える。



「ちょっ…、何で団蔵なんだ!」
「人選に文句は言わない約束だろう。…強いて言えばこの子が一番我が軍に損害を与えたから、かな?」



そう、確かに団蔵はその体術と攻撃性で何人かを殺めている。陣地に切りこみ焙烙火矢を投げ込んだりもした。作戦をたてたのは別の人間なれど、実行したのは団蔵だ。
敵から見れば憎かろう。たかが十四の子供にここまで戦局を歪められては。だから団蔵なのだ。
そう言われてしまえばぐうの音も出ない。実に理にかなっている。
言葉を飲みこんだきり丸だが八重歯がギラリと光り何かを言いたそう。でも言ってしまったら拷問が酷くなるかもしれないから言えない。



「大丈夫だよ。痛みには慣れてる」



立ち上がった団蔵の顔には好戦的な笑みが。
数々の実戦をくぐり抜けてきたのだ、多少の痛みくらい平気。

団蔵はみんなを安心させるためヒラヒラと手を振った。大丈夫、痛みさえ我慢すればみんな助かる。だからみんなも耐えてくれ。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ