□甘えたい甘えたい
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団蔵は基本素直だから甘えたいときに甘えてくる。人目も憚らず甘えてくるときもあって困るが、可愛いし嬉しいしであまり注意もせずなあなあで流していた。
意地を張って甘えないときもあるけど、大抵はいきなり抱きついてきたり頭を撫でてきたり。やらしさは一切ない。ただ純粋に甘えてる。
僕が甘えるよりも先に甘えてくるから、僕から甘える機会はあんまりない。



「その団蔵が甘えてこなくなり五日ですか」



そう、そうなんだよ。隣りの虎若に相談してるけど、団蔵が甘えてこなくなったんだ。
理由は全く思い浮かばない。甘えたそうにソワソワうずうずしているんだけど、抱きついてこない。後ろに気配を感じて振り向くと、指をかくかくさせている団蔵がいて、目が合うと慌てて走り去って行ったり。
抱きついてくればいいのに…。
僕から甘えようにも、そういうときに限って時間があわない。結論を言えば、この五日、授業以外で団蔵に触れてない。



「触りたいよー!」
「触れよ」



このクソ虎、触れないから悩んでるだろ。



「何で甘えてくれなくなったのかな。僕なんかしたかな…」
「うーん…、知らないうちに嫌がることをしたとか」



嫌がることなんてしてない!…と信じたい。
団蔵にヘタレと怒られるくらい奥手な僕が、強引に何かできるわけもなく。
キスはムードになればできるようになったけど、最初は必ず許可もとってた。手を繋ぐにしても十分くらいずっと考えて考えて、結局悩んでるうちに団蔵から繋いでくれること多数。今は悩む時間が五分に減った。
はっ、まさかそれ…?



「僕がヘタレすぎるから?」
「あー、確かにヘタレすぎるとイライラするかも」
「そんな…」



強引にして欲しかったのか、団蔵!
無理矢理?後ろからいきなりお尻揉んで?いやいや、それは違うだろ!
僕とのエッチじゃ物足りなかった?まさか。だって可愛い声出すしすぐいくし、感じてないことはない。
団蔵可愛いんだよ、エッチするとき恥ずかしがって嫌だ嫌だって言うけど、僕が手を引っ込めると「何でそうやって…」って怒る。基本素直だけどこういうとき意地っ張り。でも、ほんとに嫌がってると思うと手出せないじゃん。こういうところがヘタレです、はい。



「金吾も甘えたいんだろ?甘えて来いよ」
「いいのかなぁ。だって逃げるんだよ?」
「そこをガッといくんだよ、ガッと!」



言うだけなら簡単だ、虎若だって奥手でヘタレのくせに。
問題は団蔵が逃げることだ。どうして逃げるのか分からない。逃げなかったら甘えるのに。
それでも五日も触ってないのはきついよ…。僕も指をカクカク。



「こんなとこで欲求不満を爆発させてる暇があったら、当たって砕けて来い」
「う」
「相談終了。これ以上のろけるな」



パンパンと手を叩いて部屋から追い出された。
のろけたわけじゃない、相談だよ…。団蔵に甘えたい触れたいっていう相談。
とりあえず今日は時間もあるし団蔵を探してみる。けど、夕方まで委員会だとか言ってたような。あー、また時間あわない。僕、夕方から戸部先生と稽古だもん。



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