利団部屋

□てふてふ
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うららかな日が照る春の日。
忍術学園の今の時間帯は昼休みだ。
一年は組会計委員加藤団蔵は、天高くそびえるずっしりとした大木に登りブラブラと辺りを見回している。
鳥と戯れ風に漆黒の髪をなびかせる姿は美しい。



「あ、利吉さんだ」



ふと下を見ると、山田先生の息子で忍たまに絶大な人気を誇るエリート忍者、山田利吉が歩いていた。
彼はたびたび忍術学園を訪れては、伝蔵と会ったり忍たまたちと遊んでくれたりする。
特に乱太郎・きり丸・しんべえと仲が良いらしいが、団蔵も利吉のことは尊敬していたし好きだった。



「山田先生に会いに来たのかなー」



ピチチと鳴く鳥を指に乗せながら、団蔵はぼんやりと思う。
利吉はこちらに気付いていないらしく、辺りをキョロキョロと見回していた。



「あ!!」



と、そのときふととあるイタズラを思いついた団蔵。ニシシと一人で笑いを噛み殺す。
戯れていた鳥を空に放し、慣れた様子でガサガサと木の上を移動する。

一方利吉の方は、木の上に団蔵がおり、なにやらイタズラを考えているなんて露知らず。キョロキョロと辺りを見ながら父である伝蔵を探す。
大抵はすぐに見つかるのだが今日に限って見つからない。
もしかして例の三人組の補習真っ最中かな、などと考え、その可能性が1番高い、と苦笑した。



「・・・ん?」



怒り心頭の父親を想像していると、何やら不思議な音が聞こえてきた。
それは敵の大音声でもなければ、獣の吼えるような叫びでもない。
しかも頭上から聞こえてくる。



「何だ・・?」



奇怪に思い利吉は上を見上げる。
―――瞬間、絶句。



「りーきーちーさ――――ん!!」



・・・頭上を見上げた利吉の目に入ったものは。
木の上から満面の笑みで落下してくる団蔵。
利吉に聞こえた『不思議な音』とは、団蔵が利吉を呼ぶ声で。
それが風の鋭い音と混ざり、『音』として聞こえたのであろう。

しかし今はそんなことを言っている場合でもないようである。



「ぎゃああぁぁあ!!」



ドスン、という鈍い音と共に、辺りには利吉の叫び声が聞こえた。



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