利団部屋
□気になるあの子
1ページ/3ページ
「父上、ご無沙汰しております。利吉です」
「おぉ利吉か。まぁゆっくりしていけ」
利吉はゆっくりと忍術学園の門をくぐった。
さわやかな初夏の風が、父と息子の間を駆け抜ける。
今日利吉が忍術学園に寄ったのは、特にこれといった理由があるわけではなく、ただ仕事がこちらの近くだったから。
明日から始まる任務はこの忍術学園の向こうにある。たまたま通り道だったので寄ってみたのだ。
「あ、利吉さんだー」
「こんちは利吉さん」
「こんにちは、きり丸くん乱太郎くんしんべえくん」
父である伝蔵に出迎えてもらったが、彼も教員、何分忙しいものである。「テストの採点しなきゃいけない」などと言って、自室へ消えた。
そんなこんなで1人になった利吉は、ちょうどいい木陰を見つけ、その木の下で座りながら学園の風景を見ていた。
「今は休み時間なのかい?」
「そうだよ」
辺りには昼食を食べ終えたのであろう忍たまたちが、わらわらと出てきて鬼ごっこをしたり寝そべったりして思い思いにくつろいでいる。
「あ・・れ」
「?どうしたんすか」
「いや、何でもないよ」
その忍たまたちを見ていて、利吉はふと気付いた。
団蔵君がいない。
団蔵と利吉はあまり接点がない。だがこの前ここへ寄ったとき、団蔵のイタズラがきっかけでしばらく会話を楽しんだのだ。
それは乱太郎やきり丸、しんべえ抜きで会話をした初めての忍たまだったりする。
父・伝蔵といつもこの3人が一緒にいるせいか、ことのほか3人と親しくなってしまい、他の忍たまと話す時も必ずといっていいほどいたのだ。
そんな中、初めて話した団蔵。優しく真っ黒髪を豊かにたなびかせる美しくも可愛らしくもある子供。
利吉と話をしたときは、イタズラのせいで先生に怒られた後の泣きっ面で。
まぁ話しているうちにどんどん笑顔になっていたのだが。
その笑顔もとても可愛らしくて、頭に焼きついて離れない。
「利吉さんはこれから仕事なんですか?」
「あぁそうだよ。忍術学園の向こうにある屋敷の殿からの依頼でね」
乱太郎の質問を受けつつ、目線は団蔵を探してあっちへキョロキョロこっちへキョロキョロ。
・・・と、そのときだった。
.