利団部屋

□成長する心
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団蔵は考えていた。
何を考えているかと言えば、他でもない目の前の光景である。



「それでね、利吉さん・・・」



きり丸、乱太郎、しんべえら3人の中心にいるのは、忍たまに絶大な人気を誇る売れっ子忍者、山田利吉である。
3人に囲まれていても、頭2つ分くらい抜け出た長身があるので、彼だと1発で分かった。



「どしたの団蔵」
「兵太夫」



縁側で木陰にいる4人をぼーっと見つめていると、兵太夫が隣りに座った。
長い髪がサラリと揺れる兵太夫は、なかなかの美人である。団蔵は『可愛い』と言われる方が多かったが、兵太夫は『美人』と謳われることが多かった。
最も、馬術などのときの団蔵は、誰が見ても『カッコイイ』のだが。



「何見てんの」



団蔵の視線の先を辿る。



「・・・乱太郎たち?」
「え・・・うん、まぁ・・・」



兵太夫は団蔵の顔を覗き込む。
少しだけ難しそうな顔をした団蔵と目があった。



「なんか、最近結構利吉さん来てくれてるなーって思ってさ」



団蔵は兵太夫と目が合うと、急いで笑顔を作った。
困ったように笑って、視線を4人に戻す。

木陰の4人は相変わらず楽しそうに笑っていた。何の話をしているのかは聞こえてこないが、山田先生のことやいつもの補習授業のこと、きり丸のバイトのことにしんべえの食いしん坊ぶりについてなど、話すネタはいくらでもある。

団蔵の言うとおり、利吉はここのところ最近頻繁に忍術学園を訪れていた。
2週間に一度くらいの割合だろうか。多いと1週間に2、3度来てくれることもある。
前までは父である伝蔵に荷物を持ってきたり、任務の通り道だからという理由が多かったが、最近はどうも特に理由がなくとも来てくれている気がする。



「そうだね、結構来てるよな」



兵太夫もうんうんと力強く頷く。
団蔵は「そうだろ」と言いながら、視線はこちらを見ず真っすぐと4人を見ていた。

何故か分からないが、あの4人を見ると胸がしくり、と痛む。
いや、正しくは『利吉があの3人と話している』からなのだが。
どうしたことか、目の前の光景を見ると胸のモヤモヤが収まらなかった。



「・・・?」



何なんだ、これ。

団蔵はわけがわからず、はて、と首をかしげる。
分からないのに胸は痛む。
しかも嫉妬という感情を持ちながら。

乱太郎やきり丸、しんべえは大好きな仲間だ。
しかし利吉と一緒にあんなふうに話しているのを見ると、意味もなく3人に対して腹が立ってくる。
利吉が笑っているのも、何となくイヤで。

ズキズキ、と胸が軋んだ。



「だーんぞ、また難しい顔してる。どうしたんだよ、もう」
「痛ッ!!」



兵太夫が苦笑しながらデコピンを1発。
それはコツン、と乾いた音を響かせ、白い額にじんわりと赤い痕を残す。

ヒリヒリ乾いた痛みが疼くそこを撫でると、利吉がこぶを撫でてくれた日のことを思い出した。



「・・・・」



今度は、ドクン、と

胸が響く。

何故だろう、また撫でて欲しいと思っている自分がいる。
こんなに僕は甘えん坊だっただろうか。


利吉の掌の大きさ、温かさ、優しさ。
そして「大丈夫?」と問いながら覗かせた、柔らかな笑顔。


思い出してしまう。描いてしまう。


カーっと体の熱が顔に集まって、ボンっと赤くなる。
兵太夫のせいでできたデコピン痕も、赤みのせいで目立たなくなった。



「・・・今度は真っ赤になって。本当にどしたの、団蔵」



そんなことを聞かれても、団蔵には分かるはずもなく。
ただ決定的なことは、利吉が他の人と話していると面白くないというそれ。



「・・・・分かんない」



何の気持ちなんだろう。
どうしてこんな気持ちになるんだろう。


団蔵の中で、利吉の存在が他の人の存在と違っていった。
















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