利団部屋

□罪悪
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愛しい人との距離が縮まっていくことはとても喜ばしいことなのに、こんなに恐怖を感じるとは思わなかった。


利吉は忍術学園の門をくぐれずにいた。先ほどから虚ろな目で学園を見やり門に手をかけようともしない。
任務開けの日だ。いつもなら団蔵に会おうと足早にここへ来て、小松田の入門票にサインをし一年は組へと直行するというのに。

会ってはいけない、と脳が叫んでいる。


それは、今回の任務でとんでもないものを見てしまったからだ。

今回の任務は城主の護衛だった。何者かに命を狙われているらしい城主に、期間の間、身辺に影からお仕え申して身を守るという内容だ。
利吉は昼は変装、夜は屋根裏でずっと城主を守っていた。

その任務のいつごろだろうか、城主は幼い少年を一人寝室へ召した。
その子は団蔵と大して年も変わらない子で、まだ未発達な体が行灯の光でぼんやりと映し出される。

利吉は警戒した。もしやこの子は刺客か、と。

覗き穴にぴったりと目をつけ神経を研ぎ澄ます。

しかしこれは余計なことだった。むしろ目を離しておくべきだったのだ。

その少年は城主と共に布団へ入る。
目を見張るような光景。
城主は少年をいとおしみながら寝間着をはだけさせて。
ふっくら柔らかい肌に手を滑らせていくのだ。


それを見た瞬間利吉の脳内は爆発しそうになった。お稚児がいることは知っていたが、まさか濡れ場を目の当たりにするとは思わなかったのだ。


バクバクと脈を刻む心臓。額からどっと溢れ出す汗。

目を逸らしたいのに体は動かず、その一点に釘付けになってしまう。


城主はこちらの存在を知らないためどんどんと行為を進めていった。
舌で体のラインをなぞり、行き着いたところを舐め上げる。
するとお稚児の体はヒクンと震え。

ゴクリと利吉の喉が鳴った。


それは決してその場に興奮したからではない。
そしてスグに利吉を罪悪感が襲うのだ。



「―――・・・ッ・・・」



お稚児と、団蔵を重ねてしまった。
何を考えた、誰を、何と。
利吉は跳ねる心臓を押さえつけ罪悪感に魘される。

お稚児を団蔵に重ね、そして組み敷いている己を想像してしまったことに対しての。

なんて浅ましい、と利吉は頭を抱えた。
任務中にとか、お稚児を団蔵に重ねたとか、そういうのも理由にある。
しかし、問題はもっと他のところ。

お稚児を団蔵と重ねたとして。
それも充分な問題なのだが。

何故、組み敷いた?
想像の中で、己が団蔵を。


団蔵はまだ十を数えたばかりの子。その子を好きになるだけでも大そうなことなのに、あまつさえ組み敷いたところを想像するとは。




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